引箔作家‧村田紘平氏と空間を引き立てるアートパネルスピーカーを制作!
その取り組みの一環として、今回、TOA株式会社さまと西陣織の箔屋「楽芸工房」三代目の引箔作家‧村田紘平氏とともに、
箔の装飾力を活かした、「空間を引き立てるアートパネルスピーカー」を制作しました。
写真提供:村田紘平
PROFILE
村田紘平
1977年、京都府生まれ。経済産業大臣指定伝統的工芸品 西陣織(製糸部門)の伝統工芸士。西陣織 箔屋『楽芸工房』の3代目として、帯地の特徴である「引箔」の製造を行う。2019年に自社ブランド「nobegane」を立ち上げ、国内外のブランド、クリエイターとのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。
引箔作家・村田紘平氏と空間を引き立てるアートパネルスピーカーを制作
これまで脈々と受け継がれてきた工芸の技術‧美意識を、現代社会を生きる人たちの日常生活に息づかせるにはどうしたらよいのでしょうか。
B-OWNDでは、その回答のひとつとして、昨年より工芸を他分野に応用するプロジェクトを開始しました。
【過去の取り組み:陶芸家市川透氏×空間デザイナー池田正樹氏「アートとしての工芸×空間デザイン」】
今回は、TOA株式会社さま(https://www.toa.co.jp/)と西陣織の箔屋「楽芸工房」三代目として活躍する引箔作家‧村田紘平氏とともに、箔の装飾力を活かして空間を引き立てるアートパネルスピーカーを制作しました。引箔とは、織物の図案を引箔原糸と呼ばれる和紙に落とし込み、織り込むための糸を生成する手前の工程を指しています。
なお、本製品は今後、サテライト型シェアオフィス『point 0 satellite』(https://www.point0satellite.work/)にて、展開する予定です。
「音もれ防止」と「ストレスフリー」の効果を両立した自然環境音がアートから流れることで、より心地よく働ける空間を実現します。
なお、『point 0』でのこれまでの活動に関しては、こちらの記事をご参照ください。
箔と光のシナジーが無限の色彩を放つ
スピーカーの装飾に使われた箔は、緑色を基調としています。村田氏は、緑色を選んだ理由について次のように説明しています。
「箔の発色は光の反射と密接につながっています。例えば、日が長いとき、短いとき、朝、昼、夜の時間帯によって箔に映し出されてくる色味が全く違うんです。そのなかでも、緑の箔は色彩の変化が最も顕著に現れてきます。暗くも見えるし、明るくも見える。だからこそ、日々刻々と移り変わる人の感情とリンクして心の安らぎを生み出す豊かさを表現できる気がしました。 」
これは、『point 0 satellite』が空間に自然を取り入れたコンセプトにもマッチしています。
また、村田氏は箔を、西陣織の「引き立て役」と表現しています。つまり、織物の「桜」や「梅」などの絵柄の背景に施される金糸の刺繍によって、織物はさらに美しく豪華なものへと仕上がります。
『point 0 satellite』は、植物を多く空間に取り入れるなど、働く人たちが心地よく過ごせる空間づくりが意識されています。今回のこのアートパネルスピーカーは、その空間の引き立て役になっているのです。
箔の装飾力を活かした新しい挑戦
現在、村田氏は、先代から引き継いだ「焼箔」での表現を追求しています。「焼箔」とは、銀をあえて硫化させることによって色味に変化を与えた箔のことです。この「焼箔」の魅力は、さまざまな色合いを表現できること、そしてなにより経年変化によって、その色合いが移り行くさまを楽しめることです。これについて村田氏は「この世のものは生まれて、いずれは朽ちていく。その自然の摂理や時の流れを感じさせる味わい深いもの」だと語ります。
すなわち、焼箔には人間の手ではコントロールしづらい自然の不確かさがあり、一歩間違えれば壊れてしまうような繊細さがあるのです。新たな箔の美しさを色彩を表そうとする挑戦から生まれる可能性に、今後も目が離せません。
おわりに
日本の伝統産業は、後継者不足という問題に直面しています。それは西陣織も例外ではありません。とりわけ、西陣織の引箔を裁断する切屋は現在、2軒のみという厳しい状況で、今後、他の工程を支える事業者によって担われていくことで、その役割を存続していくことも考えられているといいます。
昔から受け継がれてきた技術を守りながら、新しい方法を見出し、挑戦していく。きっとそれが、次の伝統を未来に繋いでいくことになるでしょう。
引き続き、B-OWNDでは、世代を超えて継承されてきた日本の工芸・伝統産業を少しでも盛り上げられるように、アーティストの皆さまと協力して、今に息づく新しい価値として活かせる道を模索していきたいと思います。