ガラスアーティスト・ノグチミエコ氏工房開設15周年! 記念イベント・特別展をレポートします。

ガラスアーティスト
ノグチミエコ氏が設立した吹きガラス工房FUSION FACTORYの15周年を記念し、工房内ギャラリーにて特別展示・作品販売が10月25日(金)まで行われています。
10月6日には、その関連イベントとして、ノグチミエコ氏の代表作「10ˣm」のデモンストレーションが開催されました。

PROFILE

ノグチミエコ ガラスアーティスト。1969年 神奈川県生まれ。1990年 武蔵野美術大学短期大学部工芸デザイン陶磁卒業。1991年 武蔵野美術大学短期大学部工芸デザイン専攻科卒業。1989年より、同校ガラス研究会にてガラス制作を始める。1991年より横濱硝子にて吹きガラスの研鑽を積む。2004年 神奈川県藤沢市に吹きガラス工房FUSION FACTORY を設立、代表を務める。2007年 テレビチャンピオンガラスアート優勝、2018年 アジアコスモポリタン賞文化賞など、受賞歴多数。

まずは工房へ

FUSION FACTORY(フュージョン ファクトリー)の最寄り駅は湘南台駅。今回は特別に、FUSION FACTORYの送迎に乗って工房へと向かいます。 10分ほど車を走らせると、工房に到着です。

FUSION FACTORYのステッカー付の車。通常はバスでアクセス可能。
工房の入り口

工房内に入ると、外気との温度差に驚きました。2000°の熱を放つグローリーホール(熔解炉)によって、少し離れたところに立っているだけでも汗が滲みます。数センチ近寄っただけでも、体感が全く異なるような熱量です。

グローリーホール。入り口から奥に向かって温度が高くなる。

工房内の様々な機械を見学しているうちに、本日の参加者が全員集合し、いよいよデモンストレーションがはじまりました。

地球をつくる

地球の見本が積みあがっている

初めに見せていただいたのは、箱いっぱいの色鮮やかな地球の見本でした。 今日のデモンストレーションは、最初にこのような地球を制作し、その周りに宇宙となるガラス部分を着けていく工程を見学します。

地球制作の工程の説明を伺いながら、実際の作業を見せていただきます。グローリーホールで熱を加えられ、液体化したガラスは、そのままの状態はすぐに垂れてしまいます。そのため、常に一定の速度で回転させておかなくてはなりません。

この工程で説明をいただいたのは、形成に最適なガラスの温度をどう見分けるかということでした。ガラスは、熱を加えると赤く変色しますが、これを利用し、なんとガラスの色合いで温度を判断しているそうです!

ノグチさんと工房のスタッフが共同でテキパキと作業を続け、あっという間に見本のような地球が完成しました。

これだけでもとても綺麗ですね。

こうして出来上がった地球は、ゆがみを防ぐために、少しの間冷ますそうですが、ほんの少しでも温度を誤ると見た目に表れるため、その加減がとても難しいそうです。

次に、地球を球体の中心に浮かべるための作業に入ります。 透明なガラスで地球を包み、球体に平均的な厚みを持たせていきます。この作業をするには、何度も竿を付け直し、両方向からガラスを肉付けする必要があります。 通常、グラスなどの底がある器は一度しか付け替えを行わないそうです。そう考えると、このシリーズ作品がいかに手間のかかる作品かがわかりますね。

もし、先ほどの地球にゆがみが出ていたり、地球の位置が中心からずれていたりすると、ガラスのレンズ効果によって、誤差がさらに大きく見えてしまうこともあります。 小さなゆがみも許されない、非常に高い技術が必要なのだそうです。

宇宙を取り付ける

地球の周りに透明のガラスを何度もつけていく。グローリ―ホールの温度で製作可能な色形が変わるとのこと。

こうしてできた球体に、さらに宇宙の背景となる「カップ」と呼ばれるパーツを取り付けます。この「カップ」には、宇宙空間が表現されており、これを背景として取り付けることによって、宇宙に浮かぶ地球の姿が完成します。

左手に持っているのがカップ。右手に持っている作品の背景になる。

このカップもまた熱したガラスと合わせるため、温度の差が大きいと割れてしまいます。スムーズに作業を進めるため、スタッフが事前に適温まで温めておくのです。

カップを取り付けたら、一端濡れた新聞紙や木製の型を使って形を整え、さらにきれいな球体に成形する工程へと移ります。

濡れた木製の型で成形
ガラスが熱いため、濡らした新聞紙から水蒸気が立ち上る

吹きガラスでは、竿を移し替えることで成形できる範囲が広がるため、ガラスを何度も付け替えながら成形していきます。

カップ側へと竿が移動した様子

このサイズになると球体は1Kg近い重さに! 暑さに加え、重量に耐えながらの制作を続けると、やっと作業工程が完了しました。

地球が中心にある球形の作品に仕上がりました

出来上がったガラス作品は、レンズ効果でカップまでの距離が倍に見えるため、実際よりも奥行きを感じます。この後10分ほど冷やし、割れを防止するために、500度で3日間かけてゆっくりと冷まして仕上げます。

デモンストレーション見学を終えて

作業の合間に笑みがこぼれる

ガラス制作はまさに熱との戦いでした。高温の室内での作業に加え、ガラスの温度管理の難易度がとても高く、熟練の技が必要です。その中でもノグチさんの作品は、様々なパーツから形成される、複雑な工程を踏んでいます。そのため、それらを融合した際に、ガラスがゆがむことなく割れることなく、ガラスらしい透明感と輝きを保ったまま作品を生み出すのには、かなりの技術力・体力が必要です。

また、鮮やかなチームワークにも驚きました。ガラス制作は、複数人での作業が必須です。FUSION FACTORYのスタッフは、各自ノグチさんの動きにあわせて、的確に役割を果たされており、その様子はまさに阿吽の呼吸を体現したかのよう。まるで舞台を見ている感覚で見入ってしまいました。

今回参加させていただいたことで、作品を鑑賞したただけではわからない制作現場ならではの苦労を垣間見ることができ、ノグチさんの作品の新たな魅力を発見する機会となりました。また、ノグチさんが真剣な表情の合間に見せる微笑みがとても素敵で、心からガラス制作を楽しまれているのだと感じたことがとても印象的でした。

特別展のみどころ

工房内ギャラリーの様子
代表作《10ˣm》シリーズ

デモンストレーション見学後は、工房2Fへ。ここでは、ノグチさんの卒業制作にはじまる、これまでの軌跡をご覧いただける展示が開催中です。どの作品からも、宇宙や生命に目を向ける、ノグチさんの一貫した視点を感じつつも、この15年の間に取り組まれてきた、さまざまなモチーフ・表現への挑戦が見て取れます。

中央には、代表作「10ˣm」シリーズが。角度によって見え方が変わり、まるで自分の気持ちが反映されたかのようにその時々で違って見えるのはなぜでしょうか。ガラスの中心に浮いた地球の浮遊感や、周りに広がる星のきらめきが、手で持っていることを忘れ、吸い込まれるような感覚です。言葉では言い表せない、神秘的な作品たち。この機会に、ぜひご訪問ください。

<展示会情報> 

「15周年記念 ノグチ ミエコ展」

ノグチ氏が設立した吹きガラス工房FUSION FACTORY株式会社野口硝子にて開催中。

工房内ギャラリーにて15年に及ぶノグチ ミエコ氏制作の軌跡が展示・販売されています。

ノグチ ミエコ氏の宇宙をテーマにした作品だけでなく、グラスなど数々のガラスアートに出逢えます。

開催期間:10月7日(月)~10月25日(金)

営業時間:午前10時~午後5時

場  所:吹きガラス工房FUSION FACTORY株式会社野口硝子 工房内ギャラリー

電  話:0466-47-1144

メ ー ル:info@fusionfactory.jp

※見学希望の場合は電話またメールにて事前連絡が必要です。

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