コレクターズインタビュー おもちゃ箱を開いた瞬間のワクワク感をいつまでも
子どもの頃に自由に買えなかったおもちゃを手に入れたようでワクワクする、と語るアレックスさん。
お気に入りのコレクションを紹介するアレックスさんは、
まるで少年のような笑顔で瞳をキラキラと輝かせます。
コレクターズ・インタビュー第7弾では、
アレックスさんにとってのアート作品を手にする魅力と、そこに込められる想いについて伺います。
編集・写真:B-OWND
PROFILE
SATOSHI ALEXANDER TAJIMA
1988年、大分県生まれ。株式会社ファーストエディション CEO(https://first-edition.co.jp/)。日本人の父とグアテマラ人の母とのハーフ。
人との出会いが新しい世界を広げてきた
ー現在、WEB広告/マーケティング事業に加えてアートに関わる事業も展開されているアレックスさんですが、そもそも起業家を目指した理由、そしてアートに関心をもったきっかけは何だったのでしょうか?
アレックス 起業もアートも、これまで出会ってきた方々とのご縁が今に繋がっています。
まず起業については、会社員時代から、経営者として活躍する方たちと関わらせていただくことが多くありました。それぞれ起業された理由があり、使命感をもって活動されている姿に強いインパクトを受け、いつか自分も起業したいと考えるようになったんです。その方々はみなさんアートに造詣が深く、ご自宅に遊びに行った際に作品を見せていただく機会がよくありました。
実はそれ以外にも、社会人になってからアートに関心を持つようになったきっかけがあります。それは、その会社員時代に出会った経営者の方を通じて、とある有名なアーティストの方と食事する機会をいただいたことです。その場での語り合いは、普段は聞けないような話題や、お話の視点も秀逸で、とても刺激的なものでした。感銘を受けて、後日そのアーティストの作品を購入させていただきましたが、額装して部屋に飾ったとき、何とも言えない充実感を味わったのです。
—それは貴重な体験ですね。特に、ご本人と直接、語らうことで生まれる触発は大きいと思います。現在のお仕事に関しても、そういった人との出会いや繋がりから展開していらっしゃるとのことですが、特にどういったことを大切にされていますか?
アレックス 仕事に関しては「先義後利」という精神を大切にしています。利益ばかりを優先するのではなく、まずは人の役に立つ商売をすることが大事で、利益はその後についてくる、というような考え方ですね。これは、当時勤めていた会社の理念でもあり、影響を受けています。
たとえば現在の事業のお客様は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、オフラインの繋がりだけでビジネスが成立しづらくなった中小企業さまが対象です。彼らも、もともと知人を通じて知り合った方々でしたが、現状などのお話を伺っていくうちに、自分がサポートすることでさまざまな問題が解決できるだろうな、と率直に感じたことが現在の事業のきっかけとなりました。
広告産業は、あくまでもお客さまのビジネスがあっての商売です。だからこそ、お互いが一緒に成長することを根幹に据えて運営しています。最近始めたアート事業に関しても、これまでにご縁のあったアーティストの方たちが活躍の場を広げていける下支えになりたいという思いから、アート展示会のプロデュースなどを行っています。これまで、人との出会いによって新しい世界が広がってきた実感があるからこそ、これからも一人ひとりとの出会いを大切にし続けたいですね。
好きを身近に置くたびに成長を感じる
—次に、コレクションについてお聞かせください。どういった方針で作品を蒐集されていらっしゃるのか、また、作品を購入する楽しみはなんでしょうか。
アレックス 私の場合は、作品に対して論理的な意味付けをしてから購入するというよりも、純粋に一目ぼれした作品を購入しているというのが本音です。言葉ではっきりとは表現できませんが、自分の”今の気分”にあっているか、というような感覚的なところを大切にしています。
私は、学生時代にDJをしていたのですが、下北沢のレコード屋で面白い楽曲をひたすら探して、ぴったりとハマるものを見つけて買う、ということをよくしていました。私にとって、アートを購入することは、こういう感覚に近いです。作品やアーティストとの出会いは、ギャラリーや、最近では夜寝る前にベッドで見る、Instagramです。そのため、購入の動機としては、やはり自分自身の視覚的な嗜好や感覚が占める部分が大きい気がしています。
実は私自身、「コレクター」という肩書は、あまりしっくりと来ていません。
オフライン・オンラインで出会った「その作品」や「それを描くアーティスト」を純粋に気に入って応援をしているので、もっと気軽な、例えば好きな音楽をダウンロードしてプレイリストを作って聴いて、みたいな感覚なんですよね。お気に入りのアーティストが新作を発表するときは、ものすごくワクワクしますし、作品を購入したアーティストが活躍している様子を見ることは、まるで自分のことのように嬉しく思います。
—アレックスさんのオフィスやご自宅にいると、まるでおもちゃ箱の中にいるかのような、楽しい気分になります。
アレックス ありがとうございます。それは、この部屋を見た友人にもよく言われます(笑)。自分の好きなものに囲まれた空間は、とても心地がいいですよ。
しかし、こういった空間を実現するためには、やはり仕事も充実していなくてはいけないんですよね。だからこそ、こうして部屋のなかに好きなアート作品を飾れるようになるたびに、自分の成長を実感するんです。理念をもって働き、その結果としてこれだけ購入できるようになったんだなと、自宅に飾ってある作品を味わうことが自らの仕事のモチベーションに繋がっています。
お気に入りのコレクションの魅力
—アレックスさんは、B-OWNDにも参画している陶芸家・美術家の宮下サトシさんのコレクターでいらっしゃいますね。
アレックス はい。もともとカートゥーンが好きだったので、宮下さんの独特の世界観には、子ども心をくすぐられるものがありました。それまでは絵画などの平面作品を購入することが多かったのですが、宮下さんの壺の作品を見て心奪われ、はじめて壺を購入したんです。とはいっても、この作品は壺であって壺ではない、既存の枠組みを超えた常識に囚われない作風が魅力的だと感じています。手で持ってみると、ズッシリとした重量感から伝わる存在感もいいですね。この作品を部屋に飾るときは、宮下さんのアーティスト性がそのまま活きるように、生花でもなければ、ドライフラワーでもない「レゴの花」を生けています。その様子をInstagramにアップしたところ、宮下さんもとても喜んでくださいました。
宮下さんは常に新しい挑戦を試みていて、私もそこに触発を受けています。これもまた私が宮下さんの作品を気に入っている理由のひとつです。
—そのほかにも、たくさんのアート作品をご購入されていらっしゃいますが、特にお気に入りのものはありますか?
アレックス そうですね。例えば、FACEさんのこの《お洒落雑誌に出てた人》は気に入っています。どことなく見たことのある雰囲気でありながらも、特定の誰かを指すわけではないという遊び心のなかにメッセージ性が含まれる面白い作品です。後から知ったのですが、現在私がアートプロデュースの展示会場として協業している「RIVERSIDE CLUB中目黒」のコースターやマーチャンダイズをFACEさんが描き下ろしており、何か縁を感じてしまいます。
また、今井麗さんの《ピクニック》も気に入っています。今井さんは、2020年頃にInstagramで出会いました。独特のやわらかいタッチと世界観に惹かれますね。作品を見た瞬間「いいな」と感じ、仲の良いアート好きの先輩方にも共有したところ、全員から「めちゃくちゃ良い!」という反応が返ってきました。
その後、今井さんの展示会があると知って、ぜひ購入したいと思いました。作品の購入には、webで申込が必要だったので、開始時間ピッタリにメールを送れるように下書きを作っていたのを覚えてます。それでも順番は30番目くらいでした。結果、50号という大作が買えてとても嬉しかったのですが、価格もサイズも当時の最高だったので、クレジットカードを持つ手は震えていましたね(笑)。
おもちゃ箱を開いた瞬間のワクワク感をいつまでも
—改めて、アレックスさんにとってアートをコレクションすることには、どのような魅力があるのでしょうか?
アレックス そうですね。アートに触れていると、大人になった今でも少年時代に目にしていた心躍る景色を思い出せる気がしています。実業家としても魅力的な会社を作っていく原動力としても、おもちゃ箱を開いた瞬間のワクワク感をいつまでも大切にし続けたいですね。
—アレックスさんのピュアな内面が垣間見える楽しいインタビューとなりました。本日は貴重な機会をいただきありがとうございました。
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