人気カフェのバリスタに聞く!コーヒーカップによる味わいの変化とは?

LIFESTYLE
美味しいコーヒーを味わうために欠かせないコーヒーカップ。
そこにもまた、奥深い世界が広がっています。
今回の記事では、コーヒーカップの形による味わいの変化や、プライベート空間でコーヒーを楽しむ醍醐味について、
東京・乃木坂エリアで、人気のカフェ「Little Darling Coffee Roasters」のバリスタ・赤川直也さんに伺いました。
文・取材写真:B-OWND
作品写真:木村雄司

PROFILE

赤川直也

1985年、愛知県生まれ。

2014年、トランジットジェネラルオフィスに入社。渋谷ヒカリエ「THE THEATRE COFFEE」にてマネージャーを務める。2016年、「コーヒーフェストラテアート世界選手権2016」で世界第2位。その後、コーポレートバリスタとして様々なカフェの店舗に携わり、2018年当社初となるオリジナルロースターカフェ「Little Darling Coffee Roasters」のマネージメントを手掛ける。コーヒーの様々な魅力を伝えるため、セミナーや写真展も開催している。

はじめに

B-OWNDでは、2022年10月7日より、「珈琲を彩る器特集~アートでより珈琲を楽しむ~」を開催し、アーティストが手掛ける特別な器をご紹介します。

「おうち時間」の充実がより重視されるようになった昨今、インテリアや日用品を見直す機会など、プライベート空間を充実させる機会も増えたのではないでしょうか。

そのなかでも、コーヒーカップは、とても身近でしかも気軽に変化を楽しめるもののひとつです。実は、カップの素材や形によって、コーヒーの味わいが変わることをご存知でしょうか。コーヒーと同様に、カップにもまた奥深い世界が広がっています。

Little Darling Coffee Roasters 外観・内観

今回の記事では、東京・乃木坂エリアにある人気カフェ「Little Darling Coffee Roasters」のバリスタ・赤川直也さんに、コーヒーカップの形による味わいの変化について伺いました。アートやデザインも取り入れ、こだわりのコーヒーを提供する「Little Darling Coffee Roasters」では、どのようなカップを使用しているのでしょうか。合わせてプライベート空間でコーヒーを楽しむ醍醐味についても伺います。

アートやデザインをとりいれた都心のカフェ「Little Darling Coffee Roasters」

コーポレートバリスタ:赤川直也氏

ー今回は、コーヒーカップについてお伺いしますが、まずはじめに、赤川さんがバリスタをされているカフェ「Little Darling Coffee Roasters」についてもお聞きしたいと思います。もともとは倉庫だった場所を改装されているということで、店内は天井も高く、広々としていて開放感がありますね。

赤川 ありがとうございます。東京・乃木坂という都心にありながらも、自然あふれる広場にあるカフェという点が、一番の特徴なのかなと思います。雰囲気としては、アメリカの西海岸をイメージしていて、リラックス感のある非日常を楽しんでいただけるように空間をつくっています。

ーそういった雰囲気を作り上げるために、こだわっていらっしゃるポイントはありますか?

赤川 そうですね。当カフェのコンセプトは、「90年代の青春」です。若いころはちょっとヤンチャもしたよね、という面白さも取り入れながら、レトロ感のある雰囲気で統一しています。アットホームな雰囲気を加えるため、店内のペイントは文字も含めて、全て手描きにこだわっています。ほかには、コーヒーのパッケージに写真を使っていることでしょうか。写真を使うことで、私たちが表現したい90年代の青春のイメージをよりダイレクトに伝えられると考えています。

「MY BEST FRIEND’S CUSH(浮気者)」という名のついたオリジナルブレンドコーヒー。「コーヒーを飲みなれない人も、ここでコーヒーを美味しいと思ったら、どんどん次のステップに進んで欲しい。」という思いを、ジョークを交えて表現している。

赤川 私自身、アートが大好きということもあり、カフェ内でアーティストの写真や絵を展示、販売させていただくこともあります。

ー店内にも植物やお花に溢れていて素敵ですね。

赤川 カフェが入っている複合施設「SHARE GREEN MINAMI AOYAMA」内には、植木屋さんがあります。店舗デザインの段階から入っていただき、一緒に空間をつくっていきました。また、同施設内にはお花屋さんもあり、いつも季節に合わせたお花をオーダーしていて、だいたい週に1回くらいのペースで入れ替えていただいています。

赤川 入れていただくお花の雰囲気によって、空間の雰囲気がガラリと変わるのは面白いですね。生花があると、気分がパッと明るくなりますから、そのテンションでコーヒーを飲んだりフードを食べたり、楽しい時間を過ごしていただくことが、よりコーヒーを美味しく、印象的に感じていただける特別な体験につながっていると思います。

「Little Darling Coffee Roasters」では、美味しいコーヒーを提供する場というだけではなく、デザインやアート、空間づくりにもこだわりながら、「コーヒーをよりスペシャルなものにするため」のさまざまな演出を行っています。

コーヒーカップの形状による、味わいの違い

ー「Little Darling Coffee Roasters」では、どのようなカップを使用されているのでしょうか。

赤川 何種類かご用意していて、豆の種類やドリンクのメニューによって使い分けています。

赤川 たとえば、こちらのカップ。厚みもなく、上に向かってやや八の字に開いているタイプです。実はこれ、本来は紅茶用のカップなのですが、フレーバーをとてもよく感じられる形なので、私たちのカフェではコーヒー用として使用しています。この形状だと、酸味もよく感じられるんですよ。

赤川 一方で、こちらは厚みのあるタイプですが、これは味や苦みといった、味わいの中にあるコクを感じやすい形状です。実際に同じコーヒーで飲み比べてみてください。

二種類の豆をご用意いただき、それぞれのコーヒーを異なるコーヒーカップで飲み比べてみる。

ーなるほど、同じコーヒーでも、驚くほどに味わいの違いを感じることができました。カップによって、フレーバーを強く感じたり、コクを強く感じたりと、おもしろいですね。

左はフレーバーをより強く感じ、右はコクを感じやすい。

赤川 比べてみると違いがわかって面白いですよね。液体の成分としては変化がないのですが、カップの形状によって、香りの広がり方が違ったり、口に入れたときの流れ方によって、最初にどの味覚を感じるのかが変わってくるのかもしれません。なかなか科学的に証明するのは難しいですが(笑)。

こういった違いが出てきますので、当カフェでは、提供したい味のイメージに合わせて、いろいろなカップを試しながら選定していきました。コーヒーの味わいを決めるのは、豆以外の要素も大きいということです。

エスプレッソカップ

赤川 また、エスプレッソカップについては、厚みにこだわりました。厚ければボディ(コク)を感じやすく、薄ければフレーバーを感じやすいのですが、そのバランスが良いのがこのカップです。私たちの店舗で扱うエスプレッソ用の豆は、酸味のある味わいが特徴なので、厚すぎないものをチョイスしています。

ほかにも、カフェラテ用のカップをご用意しています。

右の白いカップがカフェラテボウル。他のカップと比べても、たっぷりとした容量が入るサイズ。

赤川 カフェラテボウルは、ラテアートがしやすいように面が広いもの、かつコクを感じやすい厚みのある形状のものを使っています。カップが重いと、逆に液体を軽く感じるので、たくさん入っていても、実はごくごくと飲めてしまいます。

ーカフェラテボウルは、実際に手に持ってみても、大きいなという印象です。たっぷり入ったカフェラテを、ごくごくと飲めてしまうのは意外ですね。

赤川 まだほかにもカップの種類はありますが、当店で使用しているものは、今ご説明させていただいたものが中心です。カップ一つで、本当に味わいに変化があるので、比べてみるとおもしろいですよね。

ー実際に飲み比べをさせていただいたことで、味の違いを実感できました。興味深いお話をありがとうございました。

プライベート空間でのコーヒーの楽しみ方

ーB-OWNDでは、2022年10月7日より珈琲を彩る器特集~アートでより珈琲を楽しむ~」として、コーヒーカップを中心とした器の特集を開催します。アーティストが手掛ける特別な器をご紹介する企画ですが、カフェのようなパブリックな場ではなく、自宅などのプライベート空間でのコーヒーの楽しみ方については、どのようにお考えでしょうか。

井上祐希《Dripping coffee cup Tenmoku》
有田焼の窯元出身の井上祐希氏が手掛けるコーヒーカップ。ストリートカルチャーに影響を受けた、アブストラクトなスタイルが人気。「天目」ならではの、黒・飴色の色味に、グラフィティを連想させる軽快な筆致によって施された銀が映える。
写真:木村雄司
今村能章《儀式の器(人の間) Ristretto cup》
神秘的な作風で知られる陶芸家・今村能章氏が手掛けるエスプレッソカップ。「もし信長や秀吉がエスプレッソに出会っていたなら…」という想像から生まれた。また、アーティスト自身もコーヒーに造詣が深いことで知られている。
写真:木村雄司

赤川 そうですね。私たちは、コーヒーをカジュアルに楽しんでいただきたいという思いから、店舗づくりやカップの選定までを行っています。そのため、店舗にあったアートやデザインは取り入れていますが、コーヒーカップに関しては、アーティストが手掛けた個性の強いものはもはあえて入れていないんですよね。この店舗はあまりにも広いですし、空間負けしてしまう可能性があるからです。

一方で、自宅のようなプライベートな空間でアーティストが手掛けたコーヒーカップを使うことは、店舗ではできない楽しみ方だと思います。

高橋奈己《チューリップカップ》
高橋奈己氏は、果実や蕾をモチーフに、まるで彫刻のような造形美を追求した作風で知られるアーティスト。白磁に浮かび上がる陰影の美しさに定評がある。本作は、チューリップをモチーフにしており、薄く柔らかな花びらを思わせる造形が特徴的。
写真:木村雄司

赤川 カップは、形によって味わいが変わりますが、見た目の印象ももちろんありますし、そういった意味でお気に入りのカップを使うことは、コーヒーをより楽しむポイントになると思います。

たとえば逆の発想で、器に合わせてインテリアを考えることもできるでしょうし、自由度の高い空間ならではの遊び方もあると思います。自分のための空間づくりの一環として、お気に入りのカップを取り入れることは、充実した「おうち時間」を過ごすのにとてもよいでしょうね。

ぜひ、カフェでも自宅でも、いろいろなコーヒーの魅力に出会っていただければ嬉しいです。

ー赤川さん、本日はありがとうございました。

【お知らせ】

長い歴史をもち、世界中で愛飲されているコーヒー。

その味わいはもちろん、香りによるリラックス効果や眠気覚ましなどが期待され、私たちの日常に欠かせない存在となっています。
そしてコーヒー同様、カップにもまた、奥深い世界が広がっています。

B-OWNDでは、アーティストが手掛けるコーヒーカップの特集を開催します。ぜひご覧ください。

【販売開始】

2022年10月7日(金)17:00~

【特設サイト】

https://hs.b-ownd.com/coffee_vessel_2022

【参加アーティスト】
井上祐希、今村能章、高橋奈己、ノグチミエコ、横山玄太郎