デジタル証明書とは?アート業界にもたらす新たな可能性について

TECHNOLOGY
近年、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が業界を超えて注目されています。
そのなかで、デジタル証明書の活用にも注目が集まっています。この記事では、デジタル証明書の概要に触れたうえで、
アート業界にもたらす新たな可能性について言及しています。
文:B-OWND

デジタル証明書とは?

デジタル証明書とは、インターネット上で行われる取引に関する事実や価値の真偽を証明するために発行された電子ファイル全般のことです。例えば、なりすましを防止するために、電子契約書に記される電子署名が本人のものであることを確認する手段として用いられています。

通常、デジタル証明書は第三者機関によって発行されます。この機関は「認証局」と呼ばれており、デジタル証明書の内容に嘘偽りがないことを裏付ける役割を担っています。これは、電子的な取引の信頼を担保する手段として必要不可欠な要素です。

EC(electronic commerce:電子商取引)の観点でいえば、ブランド品や宝飾品など市場に偽物が出回りやすいものは、買い手と売り手の結ぶプラットフォームが「認証局」としてデジタル証明書を発行することで、消費者が安心して取引できる環境を作ることが可能となります。

アート業界に導入されることで生まれる3つの価値

さて、デジタル証明書がアート業界に応用されることで一体、何が起きるのでしょうか?ここでは大きく3つの価値の可能性について言及していきます。

【アート業界に導入されることで生まれる3つの価値】

  • 1 本物とレプリカを区別できるようになる
  • 2 一次流通以降の商取引で生まれる価値をアーティストに還元できる
  • 3 アート作品の所有履歴を記録することでコミュニケーションが生まれる

1.本物とレプリカを区別できるようになる

第一に、デジタル証明書がアート業界に導入されることによって、本物とレプリカを区別できるようになる可能性があります。

従来では、「アート作品が本物かどうか?」を判断するには専門家の協力が不可欠でした。作品に記載されたアーティストのサインや紙媒体の証明書は世代を超えて継承されるなかで劣化していくため、学術的な見地から類推して判断せざるを得ません。

けれども、専門家の間でも意見が割れてしまうと、本物とレプリカを区別することが困難になるおそれがあります。「作品が偽物かもしれない」という不安はアート作品の価格に影響するだけでなく、作家やアート市場に対するコレクターの不信感にも繋がる悩ましい問題です。

しかし、証明書がデジタル化されることで素材にまつわる経年劣化の問題を解決できます。今後、アート作品の情報をブロックチェーンに落とし込む機能を拡充していけば、長遠な歴史を経たとしても、後世の人たちが本物と偽物を区別できるようになるかもしれません。

2.一次流通以降の商取引で生まれる価値をアーティストに還元できる

第二に、一次流通以降の商取引で生まれる価値をアーティストに還元できるかもしれません。

特に、ブロックチェーンの技術がデジタル証明書に実装されることで、アート作品の価格をリアルタイムで記録し続けることができます。

これを応用すれば、作品が流通する過程で生まれた付加価値の一部をアーティストに返すような仕組みづくりが可能になると考えられます。

例えば、二次流通、三次流通とアート作品が売買される際に、当初の価格よりも高騰した差益の一部をアーティストに還元できるかもしれません。

これまでは、アーティストがコレクターにアート作品を売った時点で「所有権」が移転するので、一次流通以降の商取引で発生した売却益はコレクターに紐づくものでした。

その結果、社会全体でアーティストの価値が認められたとしても、経済的にも厳しい状況に置かれざるを得なかったわけです。これは、新しい作品を生み出す機会が失われてしまうことにも繋がる大きな問題だと言えるでしょう。

3.アート作品の所有履歴を活かしたコミュニケーションが生まれる

第三に、コレクターがアート作品を所有していた事実をデジタル証明書に記録することで、アーティストを中心としたコミュニケーションが生まれる可能性があります。

通常、アーティストの手からアート作品が離れた後は、それが「いつ、どこで、だれのものになっているのか?」を追跡するのは難しい作業でした。特に、所有権が何度も移転するような場合、アーティストとコレクターが交流することは稀と言ってよいと思います。

しかしながら、アート作品の所有履歴が半永久的に記録されることで、アーティストとコレクター、あるいはコレクター間の交流を企画することが可能になるかもしれません。具体的には、アーティストの展示会を開いたり、映像を作ったり、その作品にまつわる精神性について語らう場を生み出したりすることができると考えられます。

文脈は異なりますが、B-OWNDでも、「Stay at Home with ART」の企画でアーティストとコレクターを結ぶコミュニケーションの場を提供しています。

アーティストとコレクターによるオンライン飲み会での一幕

参加者のみなさんから喜びの声も多く、これまで以上にアーティストや作品との精神的な距離が近づいたと言われる方もいらっしゃいます。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、私たちの日常生活に「ソーシャルディスタンシング」という新しいライフスタイルを生み出しましたが、直接会うからこそわかる相手の気持ちが抜け落ちてしまう「コミュニケーション」の課題を抱えている人たちが多いようです。

その意味では、今後インターネット空間を活かした豊かなコミュニケーションのあり方が求められるなかで、アートという利害を超えた感性に基づく対話の場を作り出すことが大きな価値を持っていると思います。

すべての人をアートの当事者に

B-OWNDは、ブロックチェーンネットワークでアーティスト、コレクター、キュレーターなどのアート作品に関わるすべての人たちを水平かつ半永久的に結び、「開かれた公正なマーケット」を目指しています。

デジタル証明書というITの力がアートに導入されることによって、あらゆる人たちがアートの価値形成に参加する場を創出することができるかもしれません。

きっと、それは人々の内に芽吹く固有の美を開花させる芸術の力を拡大させる一助となるのではないでしょうか。