ウルトラマンシリーズ60周年記念「B-OWNDコラボレーション展」インタビュー 陶芸家・今村能章(前編)
写真・木村雄司 / 仲信達也
PROFILE
1984年兵庫県生まれ、沖縄県在住。幼少期より未確認生物や「未知なるもの」への強い関心を持ち、既存の分類に当てはまらない圧倒的な存在感を、陶という素材を通じて具現化し続けています。
ウルトラマンシリーズの原体験
― 最初に、今村さんにとってのウルトラマンシリーズにおける思い出や、原体験の記憶があれば教えてください。
今村 僕は弟と妹がいるんですけど、弟が4つ離れていて、彼が生まれる前くらいかな、家の近くに「宝塚ファミリーランド」っていう遊園地があったんですよ。
当時、そこにいたホワイトタイガーが大好きでよく親に連れて行ってもらっていました。その遊園地に行った帰りに、いつもウルトラマンの小さな指人形を1個買ってもらえたんです。
当時は「ウルトラマンレオ」が出てきた頃で、僕は新しいもの好きだったからレオを買ってもらって集めていました。
弟が生まれてからは2個ずつ買ってもらえるようになって、タロウやウルトラの父、母など、気づけば10個も20個も集まっていましたね。弟と一緒に遊んだこと、そして大好きな遊園地の記憶と重なって、ウルトラマンは僕の中で「幸せな思い出」の一つとして強く残っています。
― 今回、ウルトラマンとのコラボレーションとして「ジャミラ」の制作に取り組んでいただきました。最初にこのオファーが届いたときの率直な心境はいかがでしたか?
今村 正直に言うと、最初は嬉しくはなかったんです(笑)。自分はもう、そういった既存のキャラクターから離れたところで、完全にオリジナルの表現としてものを作っていたので、そこに他人の思想やアイコンを入れていくことにすごく違和感がありました。だから、ウルトラマンシリーズの企画でありながら僕があえて「怪獣」を選んだのも、その違和感を少しでも薄めたいという思いがあったからです。
ウルトラマンはウルトラマンでしかありませんが、怪獣であれば、子どもの頃から昆虫や恐竜、未確認生物が好きだった自分のルーツに少し寄り添えるなと思ったんです。
ジャミラの悲哀と、土に宿る「野生」

写真提供:木村雄司
― 数ある怪獣のなかから、なぜ「ジャミラ」を選ばれたのでしょうか。造形的な着眼点も含めて教えてください。
今村 ジャミラのエピソードが、子どもの頃からずっと心に残っていたからです。
もともとは人間だった宇宙飛行士が、宇宙で遭難後、空気や水のない惑星にたどり着き、過酷な環境に適応するうちに、怪獣へと変貌してしまう。救助活動もされず、存在が隠蔽された恨みから、地球へ戻ってくるんですが、水に弱い体質になってしまったため、ウルトラマンにまさかの「水攻め」で倒されてしまうんです。
変貌する前は水を欲していたであろうジャミラを、よりによって水で倒すのかと、子どもながらにものすごく複雑で悲しい気持ちになりました。「どっちが悪なんだろう」って、明確に善悪を決められない引っかかりが残りました。
大人になった今でも、「一方向からだけ見て善悪を決めてしまうことで戦争が起きる」といった話を日頃からよくするので、いま表現すべき素晴らしい題材だなと思ってジャミラを選びました。
造形的には、ジャミラの肌ってまさに「陶芸」そのものだと思ったんです。
昆虫っぽい怪獣やマグマのような怪獣など色々いますが、ジャミラのあの質感は、土をそのまま焼成したかのような、乾いた宇宙の大地を連想させます。「これは陶芸で再現できる」という確信がありました。

― 今回の作品には、今村さんのどのような美学や技法が注ぎ込まれていますか?
今村 僕は細部を緻密に作り込む造形が好きなのですが、今回のジャミラには、その上に「雲」を配して、そこから雨のようなガラスが流れる表現にしました。
僕の制作の一つのテーマとして、「手で細かく作り込む作業」と、「完全に窯に任せて、熱と重力の力で崩壊・流動させていくこと」をミックスさせるというものがあります。
一般的には釉薬は陶土や磁土という母体を必要とし、ある意味そこに縛られているというか、表層を彩る目的で使われますが、僕は釉薬の持つもっとワイルドな姿が見てみたい、そんな感覚で作品を作っています。
例えるなら動物園の虎ではなく、野生の虎を見てみたい。きっともっと怖いし、美しい。そのようなものを釉薬からも感じてみたい、感じさせたいんだと思います。
そうしたいわば野生の釉薬の姿と、人間の手仕事によるコントラストを、今回の作品に閉じ込めるような気持ちで作りました。
ウルトラマンシリーズ60周年記念「B-OWNDコラボレーション展」
会 期:2026年10月2日(金)~13日(火)
会 場:B-OWND Gallery
〒103-0028 東京都中央区八重洲1-6-1 TOFROM YAESU TOWER 1階
営業時間: 11時~20時
定休日:月曜日
月曜日が祝日の場合は営業し、翌平日に振替休業いたします