ウルトラマン60周年コラボレーション展示 ウルトラマンシリーズ60周年記念「B-OWNDコラボレーション展」インタビュー 陶芸家 幸兵衛窯八代目・加藤亮太郎(後編)
写真・仲信達也
PROFILE
1974年、岐阜県生まれ。七代 加藤幸兵衛の長男。人間国宝 加藤卓男の孫。1804年に開窯した美濃焼を代表する窯元 幸兵衛窯の八代目。京都市立芸術大学大学院で陶芸や書を学ぶ。1999年、同校陶磁器専攻修了。穴窯焼成による美濃桃山陶の伝統に正面から向き合いながらも、コンテンポラリーなエッセンスを盛り込んだ作品を制作している。また彼は、20年にわたって茶道を嗜む茶人でもあり、茶陶を深く理解する陶芸家として定評がある。近年では、書家としても活躍の場を広げている。
幸兵衛窯 ものづくりの精神

― 「幸兵衛窯」の歴史や、ものづくりの精神の土台についてお伺いしたいです。代々続いてきたなかで、どのような家風を受け継いでいると考えますか?
加藤 幸兵衛窯は江戸後期の1804年に開窯、うちの初代がまさにこの場所で焼き物を始めました。
初代から4代までは、白い磁器に青い呉須(ごす)で絵付けをする「染付」の技法を、当時にあった登窯で代々焼いていました。
そこから流れが変わるのが、曾祖父の5代幸兵衛の時代です。
大正から昭和初期にかけて、それまでの分業制で職人に作らせる工房のスタイルから、個人名で作品を発表していく「陶芸家」という個人作家のカテゴリーがこの地方でも新たに生まれました。
皆が競い合って人間国宝など素晴らしい作家が輩出された時代です。5代は中国陶磁をやり、その次の祖父である6代加藤卓男(人間国宝)はペルシャ陶器を研究してラスター彩の復元や三彩を手がけました。そして父、7代幸兵衛は現在ペルシャ陶器を継承していますが、もともとは日展の作家としてオブジェの作品を作っていました。
代々同じ技法をやり続けるおうちもありますが、うちの場合は「各代でやることがガラリと変わる」。各代の世界観で自分の作風を作っていくことこそが、幸兵衛窯の家風なんです。
そのなかで私は、美濃桃山陶の伝統技法を現代に蘇らせるという、ある種の「原点回帰」の姿勢で、世界に誇るべき美濃焼を作りたいと思って取り組んでいます。
穴窯の偶然性と「3割」の生還率

― 穴窯(薪窯)を用いた焼成という、非常に過酷でコントロールの利かない技法にこだわられている理由は何ですか?
加藤 私はガス窯や電気窯での焼成から、この穴窯に完全に切り替えて、かれこれ15年ほどになります。
なぜ穴窯かというと、焼き上がりが圧倒的に味わい深いし、土や釉薬といった素材そのものの魅力が引き出されるからです。
年間で8回から10回ほど窯焚きをしますが、このペースを守りながら、焼き物らしい魅力を持った茶盌を作りたいという想いがあります。
ただ、焼き物というのは自分がイメージしたものが100%そのまま形になるとは限りません。
特に穴窯の焼成となると、自然の炎の力によるアクシデントや偶然性がどうしても入ってくるので、想定外の仕上がりになります。でも、そこが面白いんです。自分の予想を超えてくるものが入り込むことで、100%ではなく、150%や200%の素晴らしいものに化ける可能性を秘めています。
実際のところ、窯に入れた作品が100個あるとしたら、半分(50個)取れれば上々で、平均するとだいたい3割くらいしか作品として残らない、失敗して当たり前の世界です。けれど、その失敗は単純な失敗ではなく、すべて今後の経験になりますし、失敗からの発見をきっかけに新しい技法やエッセンスが生まれることも多々あります。
そう考えると、まったく無駄なものは何ひとつないんですよね。
手のひらのなかのライフワーク

― 加藤さんにとって、長年作り続けている「茶盌」という存在は、どのような位置づけにありますか?
加藤 若い頃はオブジェや大きなインスタレーション作品を作っていた時期もありました。そこから一旦離れて、茶盌の世界にどっぷりとはまったんです。
今はまたオブジェも作りますし、書を描いたり、焼き物と書を融合させた作品など色々展開していますが、最終的にはそういったすべての経験やエッセンスが、茶盌のなかにギュッと集約されてくればいいなと思っています。
茶盌というのは、それくらい生涯をかけてやるべき、汲めども尽きぬ魅力を持った私のライフワークです。
最近はまた、自分を大きく左右に振るために大きめのオブジェ制作などもしていますが、そこを経て戻ってきたときに、また茶盌に新しいスケール感が宿るのではないかと思い、そのサイクルを楽しんでいます。
今回の企画でもウルトラ怪獣を想起させるデザインや形状に挑みましたが、最終的にはやはり「良い器」でありたいと思っています。
茶盌やぐい呑みは使えるものですから、気に入っていただいた方に使ってもらい、美味しいお茶や美味しいお酒が飲めるものでなければならない。お客様のなかに愛着が湧き、使う人の気持ちがどんどん入っていくような器に育ってくれたら、これ以上の幸せはないですね。
― 最後に、今回の挑戦を経て、今後のご自身のスタンスについて教えてください。
加藤 バッチリそのままキャラクターを作るのではなく、「よく見たらあの怪獣に見えるな」というワクワクする塩梅を自分のスタンスとして、これからも新たな表現を築いていきたいですね。
今後も新しい出会いや試みにはどんどんチャレンジしていきたいですが、自分の制作スタイルを曲げてまでやろうとは思いません。自分の軸をしっかりと持ちつつ、そこに新しい要素を引き込んで、また面白いものが生まれればいいなと思っています。
ウルトラマンシリーズ60周年記念「B-OWNDコラボレーション展」
会 期:2026年10月2日(金)~13日(火)
会 場:B-OWND Gallery
〒103-0028 東京都中央区八重洲1-6-1 TOFROM YAESU TOWER 1階
営業時間: 11時~20時
定休日:月曜日
月曜日が祝日の場合は営業し、翌平日に振替休業いたします
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