ウルトラマン60周年コラボレーション展示 ウルトラマンシリーズ60周年記念「B-OWNDコラボレーション展」インタビュー シーサー職人 やちむん家四代目・新垣優人(後編)

ARTIST
ウルトラマンシリーズ60周年を記念して、B-OWNDによるスペシャルコラボレーション展が実現しました。本展では、「ポップカルチャー」と「工芸」を融合させ、アーティストたちがウルトラ怪獣の皮膚感や独自の造形美を再解釈し、創り出した作品が誕生しました。 参加した全8名の各アーティストに、ウルトラマンシリーズの「原体験」や制作背景について伺いました。
文章・B-OWND
写真・木村雄司 / 仲信達也

PROFILE

2015年 大学在学中に父・光雄が京都の清水寺に奉納した「祥雲青龍」に感銘を受け、シーサー職人になることを決意2016年 父・光雄のもとでシーサー作りを学ぶ2017年 大学卒業後、本格的にやちむん家でシーサー職人として活動開始

守護神としての共通点と「地球」への想い

新垣優人 ウルトラマン シーサー
《地球を守る ウルトラマンとシーサー》
写真提供:木村雄司

― シーサーの技法をウルトラマンの作品に落とし込むなかで、どのようなアプローチを試みましたか?

新垣 シーサーの柄や色をウルトラマン仕様にしたり、カラータイマーをつけたりする作業は、普段作っているシーサーの感覚とあまり変わらなかったので、すんなりと入っていけました。

もう一つの「ドドンゴ」をモチーフにした作品は、怪獣自体のパーツがもともとシーサーにすごく似ていたので、角や羽をつけたり、体のゴツゴツした鱗のような表現を施したりするのがとても楽しかったです。普段のシーサーではやらないような細かい細工にこだわったので、ぜひ細部まで見てほしいですね。

新垣優人 ウルトラマン シーサー
《ウルトラマンとドドンゴ紋様シーサー》
写真提供:木村雄司

― 最初のスケッチ段階では描かれていなかった「地球」が、本制作の途中で作品に加わったとお聞きしました。そこにはどのような心境の変化があったのでしょうか。

新垣 最初のスケッチでは、シーサーによく持たせる普通の「球」にしようと考えていました。

でも、実際に作り進めていくうちに、「ウルトラマンは地球の平和を守るヒーローだ」というイメージが僕のなかでどんどん膨らんできて、この球を「地球」にしたいと思ったんです。

普段僕が作っているシーサーの球には、「家族」や「会社の従業員さん、お客様」といった、その家にとっての「宝物」という意味が込められていて、それをシーサーが大事に守っているというイメージで制作しています。

今回、その球を「地球」にすることで、「地球を守るシーサー」と「地球を守るウルトラマン」という、二体の守護神の意味を重ね合わせることができました。

引き算を手放し、たどり着いた「掛け算」の美学

新垣優人 シーサー
写真提供:仲信達也

― 昔から愛されてきたウルトラマンシリーズという作品と対峙したことで、作る前と後でどのような手応えを感じていますか?

新垣 これまでキャラクターものとシーサーをコラボさせた経験は自分の中になかったので、最初はファンの目が怖いという気持ちもありました。でも、いざ粘土を触って作っていると、だんだんとそのウルトラマンが「自分のもの」になっていく感覚、僕のシーサーとして馴染んでいく感覚があって、最終的にはとても楽しく制作することができました。

今回のウルトラマンの企画には「いつもあなたのそばにいた」(with U)というテーマがあると聞きました。沖縄においてシーサーは「いて当たり前」の生活の一部であり、身近にいる守り神です。

ウルトラマンもシーサーも、「身近なところで大切なものを守ってくれている」という点で、本質的に深く繋がっているなと感じました。球を「地球」にしようと決めたあたりから、ウルトラマンへの親近感が一気に湧いて、見え方が変わっていきましたね。今、地球上ではいろんな問題が起きていますが、日本だけでなく世界全体を「守ってほしい」という謙虚な願いを込めています。

― 展示会場では、他の作家さんのウルトラマンシリーズを題材にした工芸品も並びますが、来場者にはどのように楽しんでほしいですか?

新垣 シーサーから入る人には「どこにウルトラマンの要素があるのか」を細かく探してほしいですし、逆にウルトラマンファンの方には「シーサー職人が作ると、どういう部分がシーサーらしく表現されるのか」という視点で、じっくりと見比べて楽しんでほしいです。

新垣優人 シーサー
写真提供:仲信達也

― 新垣さんが作陶を続けるなかで、ずっと「手放さなかったもの」と、逆に「手放してよかったもの」があれば教えてください。

新垣 僕は基本的に「全部取り入れる派」なんです。若い頃、壷屋の先輩や昔からシーサーを見てきた年配の方たちから、「あんたのシーサーはごちゃごちゃしすぎている」「足し算ばかりじゃなくて、引くこと(引き算)も覚えないといけないよ」と言われたことがありました。

でも、僕はそれが嫌だなと思って(笑)。引くくらいなら、とことん「掛け算」をやってやろうと思ったんです。だから、僕が手放したのは「表現を引くこと」です。引き算の美学はきっぱりと手放しました。

いろんなモチーフとコラボレーションさせたり、要素をどんどん足して掛け合わせていく。

そうやって「掛け算」を突き詰めることで、お客様の多様な気持ちに寄り添い、より深く喜んでもらえる作品ができる。

この「掛け算の表現」こそが、僕の一番の「らしさ」であり、これからもずっと手放さずに守り続けていきたい本質だと思っています。

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ウルトラマンシリーズ60周年記念「B-OWNDコラボレーション展」

会  期:2026年10月2日(金)~13日(火)
会  場:B-OWND Gallery
〒103-0028 東京都中央区八重洲1-6-1 TOFROM YAESU TOWER 1階
営業時間: 11時~20時

定休日:月曜日

月曜日が祝日の場合は営業し、翌平日に振替休業いたします