古賀崇洋 陶芸家・古賀崇洋が5月に東京で個展を開催予定|彼が見据える未来とは?(後編)

陶芸家
これまで、脈々と受け継がれてきた日本の陶芸へのリスペクトを持ちつつも、
その枠組みに捉われない活動を展開してきた古賀。
2021年5月には、東京で2年ぶりとなる大個展を
RAYARD MIYASHITA PARK「or」(渋谷)にて開催予定だ。
この記事では、近年の活動を振り返りつつ、個展の見どころ、今後のビジョンについて聞いた。
文:B-OWND
写真:石上洋(制作風景)・ B-OWND(その他)

PROFILE

古賀崇洋

1987年、福岡県生まれ。2010年佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程卒業。2011年より鹿児島県長島町にて作陶。2017年より福岡県那珂川町、鹿児島県長島町にそれぞれ工房を構え、現在2拠点で作陶している。

完全新作も登場する5月の個展

―5月には、東京で2年ぶりの個展が開催されます。どんな作品が出品されるのでしょうか?

古賀 大きく分けて3つあるんですけれど、1つは《SPIKY》シリーズなどの酒器と《頬鎧盃》という僕の代表的な作品で、どちらも新しいモデルが出ます。とくに《頬鎧盃》は、TRiECHOESさんとコラボレーションをした際のミュージックビデオで使用されたモデルを初めて販売しますので、注目してほしいですね。

2つ目は、これまでにないサイズの巨大な壺です。

僕が《SPIKY》シリーズを作ったきっかけとなった体験があるんですが、それはあるとき海外の美術館で、名品とされている「壺」を見て、作品からものすごい「力」を感じたことです。はじめて「壺」というものに心から感動したんですよ。その時に感じた、モノに内在する「力」をどうにか表現できないだろうかという発想の末、行き着いたのがスタッズでした。だから「壺」は、その原点として、僕の中ではいつまでもチャレンジしたいものです。

焼き物は大きくすればするほど、形成や焼成での割れやすいなど、難易度は高くなりますし、5月の展示はこれまでの活動の集大成として、みなさんをびっくりさせられるものを作りたいですね。

そして最後になりますが、これは完全に新作で、「招き猫」が出ます。制作のきっかけとなったのは、以前NYを訪れたとき、日本とは全く所縁のなさそうなとある店舗に「招き猫」が飾られているのを見て、その強い存在感に驚いたことです。

やはりこのご時世ですから、縁起物として、打撃を受けたすべての皆様に、福が来るようにとの願いを込めています。「招き猫」もバリエーションはいくつかあって、中には《頬鎧盃》を着けた猫も出ますので、楽しみにしていただきたいです。

人・音楽・アートが交差するカルチャーハブステーション「or」(渋谷)で展示を行う意図

―ところで、5月の個展は、渋谷のRAYARD MIYASHITA PARK「or」で行いますが、この会場で行う意図をどう考えますか?

古賀 そうですね。今まではギャラリーや百貨店といった場所でやるのが一般的でしたし、その意味もすごくあったと思うんです。ですが、たとえばadidasさんでの展示やTRiECHOESさんとのコラボレーションなどを経験するなかで、僕自身の考え方も柔軟になっていきました。自分の展開を考えたとき、伝統へのリスペクトはあっても、その枠組みで勝負をしているわけではないなと。それならば、ホワイトキューブではない、もっと自分を表現できる場所で展示をやってみたいと考えるようになりました。

じゃあどこでやるか? と考えたとき、僕にはストリートカルチャーが下地にありますし、そのカルチャーが生まれた場所って当然「ストリート」じゃないですか。RAYARD MIYASHITA PARKは、渋谷という若者の文化を発信する街にあるし、そこで、人・音楽・アートが交差するカルチャーハブステーションを掲げる「or」さんでやることに意味があるように思いました。今まで文章でしか伝えられなかったコンセプトが、会場やイベントや展示全体を通してもっと違った形で伝えられるんじゃないかと考えています。

―今回の展示のテーマは「Anti Wabi-Sabi」。古賀さんがアーティストとして掲げているコンセプトと同じですね。

古賀 「Anti」は、僕の中では「下剋上」とも言い換えられるものなのですが、これは僕が現代という時代に感じている、「自分の意志や生き様によって、何にでもどこまででも上り詰めることができる」っていう肌感覚なんです。加えてこの時代、ウイルスという目にも見えないものによって、人類は逆境に立たされている。

新しい文化や伝統って、人々が逆境に立たされているときや、現状へのカウンターから始まるというのがあると思うんですよ。たとえば僕が影響を受けている千利休も、色鮮やかで豪華な中国の器がもてはやされていた「唐物」の時代に、あえて国産の「黒」の茶碗を提示した。しかも、唐物よりも高い値段で。それってつまり「アンチ唐物」みたいなことですよね。それが現代にまで続く日本人の美意識として、伝わっているのはものすごいことだと思います。だから、また5~600年の時を経て、再びアンチを起こさなければ、何かが大きく変わることはないんじゃないかな。自分が新しい美意識を提示して、それがある種スタンダードになっていくというくらいの意気込みで作品を制作しているという意思表示です。

5月の個展では、工芸にエンターテイメント性を掛け算する

―今回の展示で、古賀さんがもっとも見てほしいポイントはどこでしょうか?

古賀 今、工芸界に足りていないのは、もしかしたらエンターテイメント性かもしれません。作品が展示されれば、みんなの感情を揺さぶられるものがあるんですけれど、たとえばパリコレなど、ファッションの分野ではショーなどでエンターテイメントへの意識を強く感じます。映像ありき、音楽ありきで、「見るもの」「体験するもの」として、作品を見せる場にプラスアルファがある。でも工芸って、作品のそばに小難しいキャプションを置いて、「あとは見てね」で、終わっちゃう。

それって僕たち世代からすると、「なんなんだ」って思わないかな? 「興味を持ってね」っていわれても、僕は興味があるからいいけれど、それ以外の人にとっては、どうだろう。敷居を僕たち自らが高くしてきてしまったのかもしれないなって。

そういう意味では、境界をあえて意識しない活動の展開には可能性があるんだろうなと。エンターテイメントとアート、アートと音楽やファッション、そういう境界を超えることで、いろんな人にもっと響かせられるじゃないかと考えています。

ずっと活動を続けてきたなかで僕が感じてきたことが、やっとこの個展でひとつ実現できるんじゃないかと思っています。今回の個展はかなり思い切った試みです。だからみなさんに、先陣を切っていく僕の姿を、ぜひ見てほしいです。

B-OWND 古賀崇洋 or

【個展テーマ】

伝統という形式だけを受け継いでいても新たな文化は生まれない。伝統的美意識へのリスペクトを持ちながらも、古賀は対極の概念「反わびさび」を本展で大胆に突きつける。
逆境を契機に、旧態依然とした文化に対するカウンターが生まれ、新しい文化は伝統となっていく。現在世界中がコロナ禍という逆境に直面している。であるならば、新しい文化が生まれる足音が聞こえてくるはずだ。
次代の伝統を打ち立てる「反わびさび」の下剋上が渋谷から狼煙を上げる。
“創造力は自粛できない”

【個展情報】 

※個展の会期は終了いたしました。

緊急事態宣言の延長に伴い、開催日程が下記の通り変更となりました。

展 示 期 間:2021年5月21日(金)~ 6月2日(水)  6月18日(金)~ 6月23日(水) 

VIP招待日:5月21日(金)  6月18日(金) 16:00~20:00

ライブイベント:5月22日(土)  6月19日(土) 16:00~20:00

1F・3F  12:00~20:00

※会期中無休

※開催期間または営業時間については急遽変更になる場合がございます。

※新型コロナウィルス感染拡防止対策のため、入場を制限させていただく場合がございます。詳細はHPをご確認ください。

会場:or | RAYARD MIYASHITA PARK

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20−10 Noth

「or」ウェブサイト:https://www.ortokyo.com

【お知らせ】

緊急事態宣言の発出や自治体による営業自粛要請等により、本展の内容が変更となる可能性がございます。変更内容につきましては、B-OWNDウェブサイト(https://www.b-ownd.com/)、SNSにてお知らせいたします。

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