市川透 「市川透個展 INDIVISIBLE -表裏一体-」を開催します(2022年9月)
この記事では、展示テーマや出品作品などについて市川氏にお話を伺います。
写真提供:市川透、道下将太郎
PROFILE
市川透
1973年、東京都出身。2011年、陶芸家・隠崎隆一氏に師事し、備前焼の技法や自由な発想の造形感覚を学び、2015年に岡山県にて独立。2016年の初個展からこれまで備前焼の概念を覆す作品を多数発表してきた。熱い血が流れるような赤、スタイリッシュでメタリックな黒や金銀の光彩が特徴的。その圧倒的な存在感から響いてくるのは、さながら〝自由への咆哮〟である。国内外のギャラリーや百貨店にて個展を開催、また多数のアートフェアにも作品を出品している。
はじめに
※こちらの展示の会期は終了いたしました。ご来場誠にありがとうございました。
2022年9月、B-OWNDは、クリニック兼アートギャラリーの「AFRODE CLINIC(アフロード・クリニック)」(東京都、表参道)と共同で、陶芸家・市川透氏の個展を開催致します。
本展のタイトルは「市川透個展 INDIVISIBLE -表裏一体-」です。医療における「生と死」や「薬と毒」の関係性をモチーフにしながら、相反する二つのものの表裏一体性を表現した作品を展示します。これまで「死」というモチーフに取り組んできた市川氏の作品は、クリニックという場において、また一つ新たな展開を迎えます。本展では、テーマに合わせた完全新作も登場します。
会場は、2022年4月にオープンしたAFRODE CLINIC(アフロード・クリニック)です。「アフロ―ド」(Afrode)とは、「”A”live “fro”m “de”ath」を意味する造語で、「死から生を見つめる」という人生観を表現しています。「死」を意識することによって、幸福な「生」を見つめなおすという視点のもと、一般的な医療の提供のみならず、アートや美容など他分野とのコラボレーションを通じて新たなウェルビーイングを創造しています。
本記事では、市川氏に取材し、個展のテーマや新作についてお話を伺います。クリニックという特殊な機能を持った場での展示について、市川氏はどのように考えているのでしょうか。
なぜ「死」というテーマに取り組むのか?
ー今回の個展テーマは「INDIVISIBLE -表裏一体-」ということで、医療における「生と死」や「薬と毒」の関係性をモチーフにされています。市川さんは、これまでも特に「死」を題材とした作品シリーズをされていますが、なぜ「死」というものに着目されてきたのでしょうか。
市川 もともと、作品を作るうえでいつも意識しているのは、一見相反するようにみえるものも、すべて表裏一体であるということです。たとえば「生と死」、「善と悪」などが挙げられますが、一般的には「生」や「善」といった側面にのみ、注視する人々が多いですよね。ですが、「死」を表現することによって、逆説的に「生」を引き立てることができるのではないでしょうか。人はいずれ死ぬのだということを意識することで、有限な生を全うし、人生を大切に生きる意識が高まると思います。
市川 私の代表作である《葉隠》というシリーズは、山本常朝の『葉隠』に記された「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という一説に着想を得たものです。必ず向きあわなければならない「死」というものを意識し、覚悟することで、人は高潔に生きることができるという考え方ですね。
もうひとつ、《Memento mori(メメント・モリ)》という作品シリーズも、考え方は同じです。これは「死を忘れるな」という意味で、ヨーロッパで古くから使われてきた言葉です。時代によって複数の文脈で使われてきましたが、命には限りがある、ということを強く意識させてくれるものです。
AFRODE CLINICへの取り組みへの共感
ー今回の個展の会場となるアフロ―ドクリニックも、「死から生を見つめる」という人生観がありますね。そういった意味でとても親和性があると感じますが、市川さんご自身、AFRODE CLINIC(アフロード・クリニック)の理念や活動を知ったとき、どんなことを考えられましたか?
市川 とても共感しました。
私は、「復元力」をテーマにした作品も制作していますが、これは治すというよりも、人間が本来持ってる力を取り戻させてあげるということが大切ではないのか、という考え方です。つまり、本当の医療というのも、単に薬や手術をして終わりということだけではなく、普段の食生活、それからメンタルケアなども大切であるということですね。自分本来の力を引き出して、ストレスの少ない生き方をするためのアドバイスをしっかりできているクリニックは理想的です。ですから、AFRODE CLINICさんを知ったときには、素晴らしい活動をされていると思いました。
また、AFRODE CLINICさんは、ウェルビーイングという考えのなかで、美容も取り入れていらっしゃいますね。美意識を尊重することもその人の大切な価値観の一つで、自分が満足する人生を送るうえでも、重要なポイントだと思いますし、AFRODE CLINICさんの特徴の一つだなと感じました。
そこで、今回の個展の新作として、「きれいに散っていく」をコンセプトに、ドライフラワーを取り込んだ作品を制作しました。これは、完全新作で、今回の個展で初公開です。
医療の現場×アートという場で
ーウェルビーイングの観点から、さまざまな提案を行っているAFRODE CLINICですが、ほかにはない特徴として、ギャラリーの機能も併せ持ち、施設内のいたるところにアート作品が展示されている点が挙げられます。クリニック×アートという発想について、市川さんはどのようにお考えですか?
市川 アートは、心の豊かさにとても関係が深いものです。作品を眺めているだけでも、気持ちが明るくなったりしますよね。たくさんの作品に囲まれることで、クリニック特有の雰囲気とは違ったものを感じられ、リラックスした状態で処置を受けられるのではないでしょうか。とてもいい掛け合わせだと思います。
ーこの個展において、市川さんが来場者のみなさまに感じていただきたいことはどんなことでしょうか?
市川 アート作品は、何かを考えるきっかけを与えてくれるものでもあると思います。自分とは違う「他者」が作り出した作品は、自身が常識だと考えていたものとは、異なる視点があることに気づかせてくれます。それによって、今まで真っ直ぐにしか見られなかったものが、実は斜めから見れるようになったりとか、そういったことを通して、自分をとりまく普通の世界が、また違って見えるかもしれません。
今回は、とくに私の人生観を強く表した作品を多く展示する予定です。作品を見ていただくことで、自分にとっての「生と死」「薬と毒」とはなにかなど、本当に幸せな人生とはなんだろうと、考えていただく機会になればと思っています。
アート作品には、メッセージ性が強いものもありますが、人それぞれ受け手によって受け取り方は違うはずです。多様性の時代といわれてる現代、人にはそれぞれの生き方や考え方があるのですから、それをぜひ大切にして欲しいですね。
ー最後に、市川さんが思う、豊かな人生とはどんな生き方でしょうか?
市川 自分を知り、自分らしく生きる道を見つけることだと思います。それを僕は、「自分の役目を知る」という言葉で表現しますが、この役目を果たすことは、自分のためだけに生きることでもないんですよね。
私は陶芸に出会って、無我夢中で取り組めるものを得たことで人生が変わりました。ですが、自分のためだけに陶芸をしているのかというと、そういう事でもありません。
私自身は、自分が死を目前にしたとき、どれだけのことを社会や個人の方に貢献できたのか、ということが満足感に繋がると考えています。
ですから、今回の展示を通して、作品から何か感じていただけるものがあればと思っています。ぜひ会場に足を運んでいただきたいです。
【展示のお知らせ】
【展示会詳細】
※こちらの展示の会期は終了いたしました。ご来場誠にありがとうございました。
陶芸家・市川透個展 『INDIVISIBLE -表裏一体-』
会 場:アフロードクリニック
〒150-0001東京都渋谷区神宮前3丁目5-7 BASE神宮前B1
会 期:2022 年9 月30 日(金)~10 月7 日(金)
営 業 日:月・水・金・土・日
休 廊 日:10月4日(火)・10月6日(木)
営業 時間:10時~19時
アクセス :半蔵門線、他各線・表参道駅A2出口から徒歩5分
今回の個展で作品をご購入いただいた方にアフロードクリニックから下記の特典をご用意しております。
【クリニック特典】
●無料
• Inbody 体内組成
• 肌診断
• 血液検査
• 「点滴全種類」または「ハイドラフェイシャル(毛穴クリーニング)」
●その他
• 次回来院時30%オフ
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