横山玄太郎 陶芸家・横山玄太郎インタビュー|ユニークな「動き」を手に入れた、ポップなネオ陶芸 (後編)

陶芸家
アメリカ留学中に陶芸をはじめたという横山の作品には、
伝統的な日本の陶芸のイメージとは異なった、ユニークな個性が発揮されている。
つるりとした表面、有機的な曲線、淡い色使い、水玉模様やストライプなどの表現は、
ポップであると同時に、エロティックな要素もはらんでいる。
「誰も見たことのない」表現を追い求め、オリジナリティ溢れる作品を生み出す発想の源泉とは?
これまでの経歴をたどりながら、アーティスト活動のコンセプトに迫る。
文・取材写真:B-OWND
作品写真:木村雄司

PROFILE

横山玄太郎

1978年、千葉県生まれ。画商の父のもとに生まれ、幼いころから美術に親しむ。1993年、アメリカ パットニースクールに入学、在学中に陶芸に出会う。1996年、アメリカ ハートフォード大学、芸術科に入学。2002年、帰国。2004年、門前仲町にアトリエGENTCERAMICS“を構え 制作活動を始める。主な展示は、2005年、個展「Bastard」(ウイルデンスタイン東京)、2015年、個展「GENTCERAMICS EXHIBITION」( 銀座三越)、2019年、個展「SOFT TOUCH」 (Gallery册)など多数。

「動き」を取り入れた作品たち

横山玄太郎 《I am too sexy for myself》
アーティストページ
作品販売ページ

―約10年アメリカに滞在し、そこで陶芸作品を制作し続けてきた横山さんですが、現在はユニークな茶器も多数発表されていらっしゃいますね。茶器は日本に帰ってきてから制作をはじめられたのでしょうか?

横山 日本に帰ってきてからです。本当にちゃんと取り組んだのは、2016年の個展から。この展示会は「TEA YOU」というタイトルで、茶道具一式を制作したんです。茶人の松村宗亮さんと交流させていただく機会が増えたのも、このころからですね。

―茶人の松村宗亮さんは、いつもユニークなお茶会を開いていらっしゃるイメージです。

横山 そうですよね。僕もこれまで、さまざまなスタイルのお茶会に誘っていただいて、作品を提供するようになりました。

今では「The TEA-ROOM」というアート集団として、一緒に活動させていただいています。この集団は、日本の総合芸術としての「茶の湯」のあらゆる形を探求するというテーマを掲げているのですが、松村さんは本当に何でもやらせてくれるんです(笑)。おかげさまで、僕もいろいろな刺激を受けながら、自由に茶道具を作ることができています。

―「歩く」シリーズの茶碗もすごいインパクトでした。

《鱗のオブジェ》完成前の様子
完成した作品は、コチラ(作品ページへリンク)

横山 誰も見たことがないものを作ろうと考えていると、とりあえず自分の世界観を出すしかなくなるんですよ。工芸っぽく、日本っぽくなっちゃうと、既視感がでてくる感じがあって、自分も萎えちゃうから。

はじめ、僕のこの「歩く」シリーズは、パイプを使って作っていたんです。それは足というよりかは、パイプを繋ぎ合わせて、流れるような動きを表現していた感じです。それが足になってきて、「歩く」シリーズになりました。 

ー制作するうえでのコンセプトは何でしょうか?

横山 「歩く」シリーズでもそうなんですけど、いつも自分のコンセプトにあるのが「動き」なんですよね。たとえば火とか波とか木とか、そういう自然に動いてるものに、人間は興味を持つから。結構長い時間見ていられたりしますよね。テレビや映画もそうだし。やっぱり基本動いてるものって、みんな好きなんですよ。

陶器って一見動きがないけど、どこかに動きが隠れてたりするんです。たとえば、昔からある「破け」、「割れ」、「垂れ」とか。でもそれだと、いわゆる、ザ・陶芸の動きみたいな感じだから、自分のなかで、どうやったら意外性のある動きを作れるのかなっていうのがひとつのテーマで。

横山玄太郎 《一人》
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横山玄太郎 《赤い階段》
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横山 だから、ぽよ~んっ、てなったような形とか、足をつけたりするのもそう。水玉も、玉がいくつか並んでるだけで、なんとなくそこにリズムができる。重力の動きがあるんだけど、それに反する動きもあったりすると、不思議な感覚が出せますよね。 

今回B-OWNDさんに出す新作も、なにかしらの動きがそこにあるんだな、ということを想像・連想させることができたら良いな、というふうに思って作りました。

人に幸せを届ける作品を作りたい 

―作品を見てると、横山さんの明るさとか、弾けるような動きのようなものを作品から感じます。そして、とてもハッピーなオーラも。

横山 それはすごくうれしいです。やっぱり、自分の作った作品で、見てくれた人の生活を幸せにしてなんぼだと思うんです。家の棚がなんかいい感じになったとか、これを出したときのお客さんのびっくりした顔を見て嬉しいとか、ひとつの作品によって、所有してくれるひとをどれだけ喜ばせられるかを考えます。

どの作家さんも絶対それは念頭にあることだと思うんですけど、やっぱりそれを飛びぬけて、もっと驚かせたい、本当に喜んでもらいたい。 

―横山さんの作品が自宅にあったら、すごくポジティブな気持ちになりそうですよね。

横山 自分の家に置きたいか置きたくないか、みたいなところは、当初はあんまりなかったんですよ。作れるだけでよかったというか。でも、最近は自分の家に置きたいかとか、こういうふうに置かれてるところを見たいとか、そういった部分をすごく想像するようになりましたね。他のアーティストの作品を買う場合も、やっぱり「自宅のここに置きたい」っていうイメージがあってからこそ、その作品に興味を持てるってところがあります。

「箱に入らない作品」を作っていきたいと思っていて。それは、作品のためにも重要なんですよね。一応こうやって僕によって生み出されたけれど、ずっと牢屋みたいな箱のなかに詰められちゃったら…僕の作った作品なんかほとんどそうですよ。売れなかった作品とか、結構そのまま倉庫に入れっぱなしみたいなのが多くて。

そうするとかわいそうじゃないですか、作品が。そういうふうにならないためにも、箱に入れられない作品を作ったら、彼らも絶対、ひとの目に触れて幸せに生きていける。

横山玄太郎 《立つ子》
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横山 僕は作品を我が子のように思ってるので。そういう子たちをいっぱい作りあげていきたいですね。それが、彼らのためにもなるし、買ってくれたひとのためにもなるし。そうすると不思議と自分のためにもなるんですよね。だから、最終的に、作品が自分を幸せにしてくれるっていうふうになっているんです。

>>前編はこちら<<

【横山玄太郎 B-OWND登場 & 作品販売のおしらせ】

陶芸家・横山玄太郎氏が、新たにB-OWNDに登場しました。

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