2020年のB-OWNDを振り返る|ヴァーチャルとリアルを行き来するさまざまな試み
B-OWNDが、2020年アートシーンのネクストブレイク【アートビジネス編】に
今、注目のビジネスとして取り上げられました。
今回は、この記事内容に関連し、2020年のB-OWNDの活動をご紹介します。
はじめに|B-OWND立ち上げの背景と歩み
B-OWNDは、2018年、全国の商業施設・文化施設などの空間づくりを手掛ける丹青社の新規事業としてスタートしました。丹青社は、日本各地に根差したアート・工芸作品を空間づくりに取り入れるなど、文化資源を活かした事業を展開してきた企業です。それゆえに、「空間づくり」と親和性の高いアート・工芸作品が、より良い空間創造に欠かせない役割を担ってきたという実感とともに、その一方で、アート・工芸の業界にはいくつかの課題があることもまた、肌で感じとってきました。
それは、「文化の担い手」の次世代の人材確保や、活動基盤の確立が喫緊であること、日本のアート市場の活性化、そして工芸品自体の価値向上の必要性といった諸問題です。
こうした課題の糸口として誕生したB-OWNDは、大きな可能性を秘めた最新のテクノロジー「ブロックチェーン」などの技術を応用しながら、ECサイトでの作品販売はもちろん、アーティストの活動などを紹介するマガジンサイトの運営、そして、オンライン・オフライン双方でのイベントを多数開催し、アートとしての工芸品の価値と、その新たな可能性を探る活動を続けています。
これらの活動がアート業界の新たなビジネスとして注目され、今回「ヴァーチャルとリアルを行き来する新たな姿」というテーマで『月刊美術』に取り上げられたことを受け、今回はこれに関連する活動を中心に、2020年を振り返ります。
▼この記事のトピック
1. インテリア素材にアートを取り入れる新たな試み
|陶芸家・市川透氏とのコラボレーション
2. モノづくりへの想いが共鳴する「B-OWND at LEXUS」
3. オフィスにおけるアートの価値を検証する『point 0 marunouchi』
4. おうち時間を豊かに|自宅で楽しむ2つの企画
「Stay at Home with ART」と「陶芸家・古賀崇洋とTRiECHOES コラボレーション」
1. インテリア素材にアートを取り入れる新たな試み
|陶芸家・市川透氏とのコラボレーション
「アートをもっと身近に、様々な人々に楽しんでいただけるものを」というテーマのもと、B-OWND参画アーティストである陶芸家・市川透氏と、丹青社デザイナーとのコラボレーション企画が持ち上がったのは、2019年のことでした。
目指したのは、建築素材と陶芸を融合させることで、日本の伝統建築にみられる屏風や襖のように、ごく日常にアートが存在する空間です。これはまさに、アートとしての工芸の可能性を広げる試みでした。
この取り組みは、当初、2020年1月の店舗見本市「JAPAN SHOP」での発表を予定していましたが、新型コロナウイルスの影響で中止。しかしその後も共同開発を進め、2020年7月に、丹青社品川本社・エントランスにて、展示会および、市川氏とのオンライントークセッションを開催しました。
市川透氏の魅力は、固定概念に捉われない発想と、独自の釉薬研究による鮮やかな色彩の組み合わせによって生まれる、大胆かつ繊細な表現です。このエッセンスを取り入れながら、既存のインテリア素材だけでは表現できない、オリジナリティの高い空間づくりの事例を提示しました。
B-OWNDmagazineでは、共同開発の様子などを語るトークセッションをご紹介しています。こちらも併せてご覧下さい。
2. モノづくりへの想いが共鳴する「B-OWND at LEXUS」
2020年4月、レクサスさいたま新都心にて、B-OWND参加アーティストの作品を展示する「B-OWND at LEXUS」がスタートしました。
車とアートは、一見すると全く異なる2つのもの。しかし、制作にかける想いや素材・技法へのこだわりなど、両者には数多くの共通点が存在します。「B-OWND at LEXUS」は、この展示を通じて、レクサスが掲げる“CRAFTED”の精神を感じていただこうという企画です。
「リアルな場」として、店舗内で作品を観覧し、気に入った作品については「ヴァーチャルな場」であるオンライン上で情報を得て、購入をすることもできます。
第一弾はガラスアーティスト・ノグチミエコ氏、第二弾は人形師・中村弘峰氏、第三弾は陶芸家・古賀崇洋氏と、これまで3回の展示を開催してきました。
2021年1月には、エッジのきいた造形美が特徴的な、白磁の陶芸家・高橋奈己氏の展示を開催いたします。
展示の様子は、B-OWNDmagazineでもご紹介する予定ですのでお楽しみに!
※レクサスオーナー様向けの展示のため、一般の方はご来場いただけません。
3. オフィスにおけるアートの価値を検証する
『point 0 marunouchi(ポイントゼロマルノウチ)』
丹青社が参画している『point 0 marunouchi』(https://www.point0.work/)は、東京駅からほど近い場所にある会員型コワーキングスペースです。
現在「未来のオフィス空間」を目指すプロジェクトとして、「オフィスにアート作品を取り入れることが、利用者の行動や心理がどう作用するか」という実証実験を行っています。展示されているのは、B-OWND参画アーティストの作品です。
コロナウイルス感染拡大によって、まさに「オフィス」の在り方は過渡期を迎えています。単に「働く場」としてのスペースではなく、なぜそのような場が必要なのか、その使命や用途が見直されつつあるのです。
先日、『point 0 marunouchi』にて、この課題について考えるトークセッションが開催されました。ご興味のある方は、下記のリンクより、ぜひご覧ください。
>>“art.0|アート×オフィス ~アートが「働く」を変える~”<<
なお、実証実験の結果はこちらのB-OWNDmagazineでもお伝えしていく予定です。
4. おうち時間を豊かに|
自宅で楽しむ2つの企画「Stay at Home with ART」と「陶芸家・古賀崇洋とTRiECHOES コラボレーション」
2020年には、「ヴァーチャルとリアル」を行き来する3つの企画に加え、自宅でアートを楽しむことができる、2つの企画を実施しました。
その一つ、「Stay at Home with ART」は、今年話題となったオンライン飲み会です。参加者であるコレクターがお気に入りの酒器でお酒を楽しみながら、アーティストから制作や作品に込めた思いを聞くというもので、主に酒器を中心とした作品を多くご紹介しました。
手元に購入した酒器を置き、作家とのコミュニケーションをオンライン上で行うという点で「ヴァーチャルとリアル」を行き来するB-OWNDらしい企画です。またこの企画は、新型コロナウイルスの影響で展示会の中止が相次ぐ中、アーティストたちに新作発表の場を提供する機会にもなりました。
B-OWNDmagazineでは、企画の趣旨や第1弾~第5弾までの様子をレポートしています。どうぞ合わせてご覧ください。
>>「Stay at Home with ART」企画第5弾 陶芸家・市川透氏とオンライン飲み会を開催!<<
またもう一つは、多くの人が自宅で過ごす時間に楽しんだ「動画」に関するものです。B-OWNDの企画により、和楽器・琴のパフォーマンス集団とのコラボレーションが実現しました。
琴とEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の組み合わせによって、新たなジャンルに挑む「TRiECHOES(トライエコーズ)」は、映像作品《Shape of you》がYoutube再生回数1600万回を超えるなど、今まさに、世界で話題沸騰中。
2020年8月に公開された映像作品《Rather Be》には、B-OWND参画アーティストである陶芸家・古賀崇洋氏の代表作《頬鎧盃》やSpikyシリーズの様々な作品が登場します。TRiECHOESとB-OWNDがコラボレーションすることで、音楽と工芸という、日本の伝統文化に新しい要素を掛け合わせた、未知の世界観が創出されました。
コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、多くの人にとって「マスク」の着用が日常となりました。TRiECHOESメンバーが着用する古賀崇洋の《頬鎧盃》は、戦国武将の防具にインスピレーションを受けたものですが、懸命に時代を生き抜いた彼らの姿に思いを馳せると、「今の状況にくじけず、不屈の精神で立ち向かえ」というエールのように受け取れます。
皆様はどう解釈するでしょうか。ぜひ、動画をご覧ください。
おわりに
世の中が大きく変化した2020年。外出自粛を余儀なくされた中で、安全に、便利に、そしてより豊かに毎日を過ごしたいという希求によって、「ヴァーチャルとリアル」がお互いに補完しあうようなかたちが、次々に生み出されています。
B-OWNDはこれらの状況を踏まえながらも、最新のテクノロジーを駆使し、アーティスト支援、工芸の価値向上や市場の拡大を目指して、そしてコレクターの皆様により身近にアートを感じ、楽しんでいただけるよう、これからもさまざまな活動を展開してまいります。
この記事でご紹介した作品