アート茶会 「アート茶会」のススメ|自身を見つめなおすアートイベント(前編)

LIFESTYLE
2021年秋、B-OWNDでは、アートイベントとしてのお茶会を開催します。
この企画にあたり、B-OWNDプロデューサー・石上賢とともに、
2名のゲストお迎えして「お茶会 × アート」についての鼎談を行いました。
文・取材写真:B-OWND

PROFILE

岩本宗涼

1997年、千葉県生まれ。裏千家での茶歴は14年を超え、現在は株式会社TeaRoom代表取締役を務める。サステイナブルな生産体制や茶業界の構造的課題に対して向き合うべく、静岡県大河内地域に日本茶工場を承継。2020年9月には裏千家より茶名を拝名。一般社団法人お茶協会が主催するTea Ambassadorコンテストにて門川京都市長より日本代表/Mr.TEAに任命されるなど、「茶の湯の思想×日本茶産業」の切り口で活動中。

 

加来幸樹

1983年、福岡県生まれ。株式会社サインコサイン代表取締役。セプテーニでのデジタルマーケティング部門のクリエイティブ職を経て、2018年にサインコサインを設立。「自分の言葉で語るとき、人はいい声で話す。」という信念を掲げて、企業や個人の理念、ブランドのネーミングやタグラインなど覚悟の象徴となるアイデンティティの共創をはじめ様々な価値提供を行う。また、それぞれの理念の重なりの認識を通じた、より良いパートナーシップの動機形成にも取り組んでいる。

 

石上賢

1992年、愛知県生まれ。B-OWNDプロデューサー。画家の父、画商の母の元に生まれる。国内芸術家の経済活動の困難さを目の当たりにし、10代からアート作品の販売、大学在学中よりアーティストのプロモーション活動を開始する。これまでに50を超える展覧会の企画に携わる。2019年、アート・工芸×ブロックチェーンのプラットフォーム「B-OWND」を立ち上げる。

はじめに

写真右から、茶道家/株式会社TeaRoom代表取締役・岩本宗涼氏、株式会社サインコサイン代表取締役・加来幸樹氏、B-OWNDプロデューサー・石上賢

B-OWNDでは、2021年11月20日(土)~23日(火)、アートイベントとしてのお茶会を開催します。

この企画の構想にあたり、B-OWNDプロデューサー・石上賢とともに、2名のゲストお迎えして「お茶会 × アート」についての鼎談を行いました。

1名は、茶道家であり、またお茶の生産から販売までを手掛ける「株式会社TeaRoom」の代表を務める・岩本宗涼氏。もう1名は、言葉のプロとして、企業や個人の理念づくりを共創する「株式会社サインコサイン」の代表取締役の加来幸樹氏です。

株式会社TeaRoom内の和室を会場に、それぞれの立場や経験にもとづいて、アートイベントとしてのお茶会を開催する意義や可能性について語っていただきました。

「お茶しよう」という、特別な呼びかけ

宮下サトシ《vortex tea bowl1》 
写真:木村雄司
アーティストページ

石上 今年(2021年)の秋、アートイベントとしてお茶会を開催するのですが、ぜひお二人と一緒に面白い企画を作っていきたいなと思い、本日集まっていただきました。今回は作戦会議ということで(笑)、いろいろと自由に話し合いながら大きな方向性を決めていきたいなと考えています。

まずはこの3人がどう集まったのかについてですが、岩本さん、加来さんのお二人は、どういった経緯でお知り合いになられたんでしたっけ?

岩本 1年半ほど前に、加来さんが弊社の株主が開催していたセミナーに登壇されていて、僕がそこに参加したのが最初でしたよね。

加来 そうですね。スタートアップ向けに、ネーミングやキャッチコピーをテーマとしたゼミを開催したんです。そこでTeaRoomのタグラインを考えるということを行ったのがはじまりでした。石上さんと岩本さんはどう知り合ったのでしたっけ。

石上 僕たちは共通の知人を通して知り合ったんです。その知人は、僕の活動を知ってくれているうえで、「岩本さんという人がいるんだけど、たぶん石上君と気が合うから紹介するよ」って。

加来 なるほど。

岩本君と知り合ってから、SNSを通じて、「この人とこの人も知り合いなんだ」と思うことがたくさんありました。いろんな関係の人たちがいるなかで、岩本君はターミナル駅みたいな感じがします。そういう意味で存在が「お茶会」のような人。

石上 たしかに、出会いをつないでいくような感じですね。

岩本 いやいやいや(笑)、お茶会に吸収されただけですよ。

でも、「お茶会」って、言葉が特別ですよね。

話したいとき、ちょっと疲れたとき、普通に「うまいお茶飲もうよ」って誘うと、来ない人はいないです。断る理由がないというか。極端に忙しいときでも、「疲れているからこそ、飲むんだよ!」が通じるし、イケイケ(笑)のときでも「いろんな人が来るからおいでよ」って。

加来 たしかにそうですね。「お茶する」っていう言葉もありますよね。

石上 アートってなっちゃうと、ちょっとハードルが高いと感じちゃう人もいると思うんです。その点、お茶ってすごいですよね。

加来 それはありますね。そういうところでいくと、今回のイベントの着想はもともと何だったのですか?

石上 僕、今年やっとお茶を習い始めたんです。実際にやってみて、いろいろな人にも出会って、あらためてお茶のおもしろさや可能性を感じました。

自然と、B-OWNDでもお茶会をやりたいなと思って。そしてどうせやるなら、誰もやったことがないようなお茶道具を揃えて…じゃあ、お茶人は誰にしよう、と考えたときに、あ、岩本さんがいたな、と。

Facebookでその件をやり取りしていたら、加来さんからも「アート茶会やりたいね」というコメントをいただいて、「お、いい人が興味を持ってくれた。」と思いました(笑)。

岩本 B-OWNDさんとやるからこそ、最終的にアートのほうにも関心を持っていただけるように、どうやって間口を広げていくか、ということもしっかり考えたいですよね。

横山玄太郎《鱗のオブジェ》
写真:木村雄司
作品ページ
アーティストページ

石上 そういう意味で言うと、僕最近めちゃくちゃはまっている漫画があって、『へうげもの』っていうんですけど。

この漫画は、古田織部という、実在の人物を主人公にした作品です。彼は、戦国時代~江戸時代はじめにかけて活躍した茶人であり、そして武将でもありました。

この漫画のなかで、北野大茶湯(きたのおおちゃのゆ)が取り上げられているんです。北野大茶湯は、秀吉が自らの権力を示すために行ったとされる、民衆も巻き込んだ大規模な茶会です。これによって、いろいろなドラマが起きていくんです。

そこで感じたのは、「お茶」によって、先ほども話したようなコミュニケーションが生まれ、そこからさらに新しい何かへと発展していくこということです。今の時代にお茶会を開催することは、デジタルなプラットフォームではない、リアルなプラットフォームになれるのではないかと思いついて。それってすごく意味があるように感じたんです。

岩本 本当にそうですね。

加来 「リアルな場」であるから何かが生まれてくる、オンラインでは思いつきもしなかったアイディアが浮かんでくる、というのはきっとすごくありますよね。

日本の価値観、それは「日々」を祝う心のありかた

石上 もともと日本美術って、空間ありきじゃないですか。建築空間としての襖絵、掛け軸、花器、ライフスタイルにまつわる、茶器、酒器。生活のなかの全体の調和として、アートがある。西洋の絵画や彫刻は、それ自体で存在できるものなので、この点において違いがあります。

茶会のフォーマットがまたすごいのは、空間全体のインスタレーションをあらゆるアートで包摂できるし、そこにコンセプトもあることです。

じゃあ、B-OWNDの茶会ってどんなものになるだろう、と考えたんですよ。それはもちろん、アートあり、テクノロジーありになるなと考えて、じゃあ、岩本さんだったら、そういった部分も柔軟に受け止めてくれて、面白いものがいっしょにできるんじゃないかと思いました。

岩本 何でもやってくれるだろうなって?間違っていないです(笑)

加来・石上 ははははは。

岩本 まあ、でもそうですね。工芸って、機能的な価値もちゃんと持っているじゃないですか。アートって、鑑賞物であり、解釈の価値というのはもちろんあると思うのですが、それに加えて機能的な価値を持ちうるものであることは、日本美術の特長ですよね。

僕がお茶の席で、海外の方に「日本の価値観ってなんだ」と聞かれたとき、いつも説明することがあります。それは、西洋社会が「サンクスギビング」「ウェディング」「バースデー」のように、節目を大きく祝うという点に対して、日本は日常の「日々」を祝うということです。

茶道家/株式会社TeaRoom代表取締役・岩本宗涼氏

なぜ日本人は、お茶をするのですかという質問に対しては、「今」を生きているという現状自分を取り巻く自然に対して、常に感謝を示すために、日常のよく使うもの(茶器)に対して敬意を示すということを、体系化してやっているのだと答えています。

石上 なるほど。

岩本 日常的に使っているものでも、そこにコンセプトやストーリーを与えることで、鑑賞物としての価値を得るということです。

これって「日本人たるものはなんだ」という部分にも通じますし、日本のアートとか工芸とか、道文化といわれるものに対して、ほかの世界と何が違うのかについては、こういう思想が背景にあるということですね。

石上 なんでも「なになに道(どう)」にしちゃう。すごいですよね、そこが。

岩本 おもしろいですよね。人間とタッチポイントがあるものをすべて道化(どうか)するっていうのは、生き方化するということなので。人間としての心得を、それらで学んでくっていう話なんですよ。

>>後編はこちら<<

【イベント概要】

「HANEDA ART EVENT ―アート×茶会の新しい形 ―」

 約450年前、時の天下人・豊臣秀吉が開催した北野大茶湯という空前絶後の大茶会。千利休や古田織部など著名な茶人や茶器が一堂に並び、身分に関係なく1,000人を超える人々が参加したとされる画期的な茶会です。

当時の茶会は現代のサロンでした。日本的美意識の本質を表現するフォーマットとしての「新しさ」を備えていた茶会は、時代を変革してきた者たちを吸引し、交流する場を形成していたのではないでしょうか。

そのような系譜を踏まえ、B-OWNDとHARTiは、現代にふさわしい「新しい形のアート×茶会」のイベントを、先端と文化を発信する羽田イノベーションシティにて開催します。

参加アーティストは計9人。陶芸/ガラス/硯/華/映像など多種多様な作品が5つの展示室に一堂に並びます。さらには、茶の湯文化のスタートアップ企業・(株)TeaRoomの代表および茶人でもある岩本宗涼が参加アーティストの茶器にてお茶を立て、お客様をもてなします。(※新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、お茶のご提供は20日の完全招待制のみとなります。ご了承ください。)

また、一般公開日にて、企業や個人の理念を言語化するプロフェッショナルである加来幸樹氏によるワークショップを開催し、個人の理念を言語化した上で、会場に展示されるアートと自己の共通点を見出すイベントを行います。

アート・工芸作品が映像、華、テクノロジーなどと相互に混ざり合うことで生まれる斬新な茶室空間を通じて、日本的美意識や精神性を可視化します。置かれている立場や当たり前とされる価値観は関係なく、様々な人が交流するアート茶会を目指しています。

開催期間 2021年11月21日(日)〜23日(火・祝)

     VIP招待日(完全招待制):20日(土)

     一般公開日:21日(日)〜23日(火・祝)

     ※理念のワークショップ開催:21日(日)・23日(火・祝)

開催時間 11:00~19:00

会場   〒144-0041 東京都大田区羽田空港1丁目1−4 

     羽田イノベーションセンター ゾーンE

     アクセスはこちら

参加アーティスト

市川透、氏家昂大、古賀崇洋酒井智也、名倉達了、奈良祐希ノグチミエコ、前芝 良紀、宮下サトシ横山玄太郎

主催   ㈱丹青社・B-OWND /  ㈱HARTi

【ワークショップ】

会期中、ワークショップを開催いたします。

企業理念や個人理念など覚悟の象徴となるアイデンティティの共創/言語化を行う加来 幸樹氏によるワークショップです。

参加者は、当日専用シートを使って加来氏と共に個人の理念を言語化していただきます。そこで言語化した自身の生き方や考え方の指針となる個人理念を元に会場で展示されている様々なアート作品の共通点や相違点などを探して頂きます。

アート作品のコンセプトやアーティストの生き様と個人理念が重なる作品に出合えるかもしれません。イベントを通じてアートの新しい鑑賞体験をご提案します。

開催日  21日(日)・23日(火・祝)

各日2回開催(13:00・16:00)

各回15名 ※事前申し込み制・先着順

※満席となりました。たくさんのお申込み誠にありがとうございました。

参加費  無料

問い合わせ先  B-OWND事務局 info@b-ownd.com

主催 B-OWND・HARTi

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