古賀崇洋 2021年6月個展直前!陶芸家・古賀崇洋氏の最新作を紹介

陶芸家
今週末いよいよ、陶芸家・古賀崇洋氏の大個展が
カルチャーハブステーション「or」(オア;ミヤシタパーク、渋谷)にてスタートします。
今回の展示には、これまでの活動の集大成として、
定番の作品はもちろん、新作も多数登場します。
本記事では、その一部をピックアップし、見どころをご紹介します。
文:B-OWND
写真:木村雄司

PROFILE

古賀崇洋

1987年、福岡県出生まれ。2010年、佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程卒業。千利休に感銘を受けた古賀は、あえて作品の存在感を際立たせる意味で、「反わびさび」を掲げる。物に内在する力を可視化するために、スタッズ(突起)を使用し、突出した人物を表現。世の中を変えてゆくような際立った存在を、磁器により結晶化する。2019年、六本木ヒルズA/Dギャラリーにて個展開催。2018年、パリ三越伊勢丹にて展示会出品。2019年、人気アニメ・東京喰種やスポーツブランド・adidas、ファッションブランド・CoSTUME NATIONALとのコラボ作品を発表など活躍の場を広げている。

はじめに

今週末、いよいよ、陶芸家・古賀崇洋氏の大個展が、カルチャーハブステーション「or」(オア;ミヤシタパーク、渋谷)にてスタートします。※現在、会期は終了しています。

個展のテーマは「反わびさび」。これまで、古賀が取り組んできたアーティスト活動の集大成となる大個展です。定番の作品はもちろん、新作も多数登場します。本記事では、その一部をピックアップし、見どころをご紹介します。

なお、近年の活動や今回の個展については、以下の記事にて古賀氏に取材していますので、あわせてご覧ください。

招き猫をアップデートした《NEO MANEKINEKO》

《NEO MANEKINEKO 0621-Ⅳ》(左)、《NEO MANEKINEKO 0621-Ⅴ》(右)

2021年の完全新作《NEO MANEKINEKO》は、その名の通り、招き猫にさまざまな要素をインストールし、新たなコンセプトを与えた作品です。

今回ご紹介する《NEO MANEKINEKO 0621-Ⅳ》(左)、《NEO MANEKINEKO 0621-Ⅴ》(右)は、「福寿」の文字が書かれた小判を首輪に下げ、右手を挙げるという、招き猫の典型的な姿をもとにしています。右手を上げる招き猫は「金運」を招くとされており、また黒い招き猫は「魔除け」、「厄除け」、「家内安全」などのご利益があるといいます。

しかし、上記の2体は、背景に立ち込める激しい炎によって、招き猫というよりも、「不動明王」を思わせる力強い神々しさがあります。炎の表現は写実的ではなく、火焔式土器や日本の伝統的な絵画のように様式化されており、また金や白銀の着彩も、水墨画のように荒々しい筆致を残しているなど、全体を通して日本美術の表現が意識されています。またこれらの表現は、招き猫の神的な存在感を高めていると同時に、世の中に打って出ようとする者の闘争心を反映したものとみることもできます。

そして、金や銀といった色彩には、今回の個展テーマでもある、古賀の「反わびさび」の精神が表れています。

「反わびさび」については、次の記事もご参照ください。

ほかにも、代表作《頬鎧盃》を身に着けたもの、スタッズが全身を覆ったものと、複数の展開があり、まさに《NEO MANEKINEKO》の名にふさわしい作品です。

炎を連想させる「紅」、神秘的な「光学迷彩」など、定番シリーズの新色が登場

今回の個展で初お披露目になるのは、《SPIKY FOX Mask 》や《頬鎧盃》と言った、定番のシリーズの鮮やかな新色の「紅」、そして「光学迷彩」です。

《SPIKY FOX Mask 0621-Ⅵ》

「紅」は陶芸にとって欠かせない「炎」を連想させる色です。

窯を焚くことによってできる焼物は、必然と炎の「力」を強く感じるもの。炎は、古賀にとってはモノに内在する力を示すための「スタッズ」と同じ考え方として、それを延長・拡大したものです。

《頬鎧盃 虎形 紅白金》

またこれまで、白磁にこだわってきた古賀氏の作品に、「紅」が組み合わさることで、「紅白」という祝いのイメージにもつながります。作品タイトルの「紅白」という文字列の通り、本作は、明るくポジティブな「ハレの日」を連想させる作品です。

《頬鎧盃 鷹形 光学迷彩 蒼》

おなじく《頬鎧盃》に、「光学迷彩」も登場します。

この上品な光沢は、光の加減によって色合いが変化し、その時々によってさまざまな表情を見せます。螺鈿や玉虫のような、または金属のような、そのどちらとも言い難い独特の色彩です。これは、白磁をベースにすることで、はじめて発色が可能となるもの。この点においては磁器ならではの作品といえますが、古賀は「焼き物らしくない焼き物」を目指して制作した、と語っています。

お酒の場で、豊かなコミュニケーションを演出する、古賀氏らしいユニークな発想の作品です。

酒器に関する説明は、ぜひこちらの記事もご参照ください。

スタッズを施した皿も初登場

《SPIKY DISH 0621-Ⅰ》
《SPIKY PLATE 0621-Ⅱ》

フラットになった現代のモノの見方に対し、あえて異物感をもってアプローチしたという「SPIKYシリーズ」。まるで、手に取ることを拒絶するような「スタッズ」が施されていることが特徴です。このスタッズは、本来モノに内在する力を可視化・可触化したもの。内に秘められた力が、表面へと飛び出したような勢いと力強さがあります。

本作は、SPIKYシリーズの新作です。丸皿、長角皿の展開があります。

天草磁石の「白」の美しさと、「ゴールド」、「プラチナ」というラグジュアリーな色使いが古賀氏らしい作品です。

今回の個展にて、初お披露目となる作品です。

おわりに

今回の個展では、他にもさまざまな作品が一堂に並びます。

東京では、約2年ぶりの開催です。このような時期ではございますが、皆様におかれましては、無理のない範囲でお越しいただければ幸いです。

【個展についてのご案内】

※個展の会期は終了いたしました。

【個展テーマ】

伝統という形式だけを受け継いでいても新たな文化は生まれない。伝統的美意識へのリスペクトを持ちながらも、古賀は対極の概念「反わびさび」を本展で大胆に突きつける。

逆境を契機に、旧態依然とした文化に対するカウンターが生まれ、新しい文化は伝統となっていく。現在世界中がコロナ禍という逆境に直面している。であるならば、新しい文化が生まれる足音が聞こえてくるはずだ。

次代の伝統を打ち立てる「反わびさび」の下剋上が渋谷から狼煙を上げる。

“創造力は自粛できない”

【個展情報】 

緊急事態宣言の延長に伴い、開催日程が下記の通り変更となりました。

展 示 期 間:  6月18日(金)~ 6月23日(水) 

VIP招待日: 6月18日(金) 16:00~20:00

ライブイベント: 6月19日(土) 16:00~20:00

1F・3F  12:00~20:00

※会期中無休

※開催期間または営業時間については急遽変更になる場合がございます。

※新型コロナウィルス感染拡防止対策のため、入場を制限させていただく場合がございます。詳細はHPをご確認ください。

会場:or | RAYARD MIYASHITA PARK

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20−10 Noth

「or」ウェブサイト:https://www.ortokyo.com

【お知らせ】

緊急事態宣言の発出や自治体による営業自粛要請等により、本展の内容が変更となる可能性がございます。変更内容につきましては、個展ウェブサイト、SNSにてお知らせいたします。