イベント古賀崇洋 陶芸家・古賀崇洋が個展を開催|圧倒的な存在感を放つ新しい工芸の魅せ方

陶芸家
2021年6月18日~23日まで6日間、カルチャーハブステーション「or」(オア;ミヤシタパーク、渋谷)にて、
陶芸家・古賀崇洋氏が『反わびさび』というテーマのもと個展を開催しました。この記事では、その様子を振り返ります。
文:B-OWND
カバー写真:石上洋
写真:石上洋、木村雄司、古川義高(ica)、nao
ライブ映像:砂川俊夫、石上洋

PROFILE

古賀崇洋

1987年、福岡県生まれ。2010年佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程卒業。2011年より鹿児島県長島町にて作陶。2017年より福岡県那珂川町、鹿児島県長島町にそれぞれ工房を構え、現在2拠点で作陶している。

イベントの開催報告

Anti Wabi-Sabi メインビジュアル
代表作《頬鎧盃》を身に着けたメインビジュアル

2021年6月18日から23日まで6日間、カルチャーハブステーション「or」(オア;ミヤシタパーク、渋谷)にて、『反わびさび(Anti Wabi-Sabi)』というテーマのもと、陶芸家・古賀崇洋氏が個展を開催しました。

会場では、代表作である《頬鎧盃》、SPIKY シリーズなどの作品に加えて、2021年の新作である《NEO MANEKINEKO》を展示。その圧倒的な存在感を放つ作品を前にして、多くの来場者がその場に釘付けとなりました。

B-OWND 古賀崇洋 招き猫

コロナ禍という逆境のときだからこそ、古賀氏が「人間の内に秘められる可能性」を発揮する意義を自らの挑戦をもって体現する姿は、まさに『(Anti Wabi-Sabi)』という言葉を心技体で物語る生き様として、工芸の新たな道を示すものとなったのではないでしょうか。

なお、本個展を開催する背景について、古賀崇洋氏にインタビューした記事がありますので、そちらもぜひご覧ください。

陶芸家・古賀崇洋の個展にほとばしる新規性

B-OWND 古賀崇洋 陶芸
写真:石上洋 

この度開催された個展は、従来的な展示とは一線を画する革新的な取り組みが多数ありました。

ここでは、大きく4つのポイントから陶芸家・古賀崇洋氏の個展に見受けられる新規性について説明していきます。

若者文化の中心で、圧倒的な存在感を放つ作品を展示

B-OWND 古賀崇洋 個展
個展会場「or」の様子
写真:石上洋 

第1の新規性として、若者文化の中心地として注目される東京都渋谷区・MIYASHITA PARK内の「or」で工芸作品が展示されたことが挙げられます。

「or」はストリート、アート、ファッション、ミュージック等に焦点を当てた、複合型のエンターテイメント施設です。1Fはカフェ、2Fはアートギャラリー、3Fはミュージックバーとなっていますが、今回は1Fと3F(メイン会場)で作品が展示されました。

会場、テーマ、工芸作品がひとつの空間として調和できるのは、古賀崇洋氏がストリート・カルチャーをはじめ、自分自身もまたひとりの若者として世の中を見つめてきた視点や価値観を、作品のなかに積極的に取り込んできたからこそだと言えるでしょう。

そして、伝統的価値を引き継ぎながらも、若者文化の架け橋となる「カッコいい陶芸」の誕生は、従来の工芸に抱かれるイメージとは異なるインパクトを放ち、若い人たちを魅了することで業界全体を盛り上げる新しいムーブメントを生み出しつつあるのです。

ライブイベントの実施|五感で楽しむ工芸の展示

ライブの様子 (輪入道)
写真:古川義高(ica)、nao

第2に、異なる分野のアーティストとコラボレーションすることで、本個展は五感で楽しめる新しい工芸のイベントになりました。

会期内に、「箏×EDM」のエンターテイメントを創造するTRiECHOES(トライエコーズ)、ヒップホップミュージシャンの輪入道によるライブが行われました。

TRiECHOESは昨年、古賀崇洋氏とのコラボレーションしたミュージックビデオを発表しており、今回の個展では、そのなかに登場した作品も展示されました。

ライブ内容もまた「Anti Wabi-Sabi」という古賀氏のアーティスト性と共鳴しており、来場者は作品を見て、手に取るだけではなく、空間全体でコンセプトを感じられるようなイベントとなりました。

その様子は後日、映像として公開される予定です。

リアル証明書の導入|アート×テクノロジーが融合した個展

B-OWND 古賀崇洋 デジタル証明書
NFCチップを搭載した作品証明カード。
スマホをかざすと、作品が生まれるまでの「ビフォア・ストーリー」を見ることができる。
写真:石上洋

第3に、本個展で販売されている作品は、NFC(Near Field Communication)を搭載した証明書カードを付属しています。これは、日本の伝統工芸分野では初めての取り組みです。

NFC対応のスマートフォンをかざすと、その作品にまつわるコンセプトはもちろんのこと、試行錯誤の過程をエピソードとして閲覧できるので、作品の過去、現在を未来へと新たな形で繋ぐ、新しいアートの鑑賞を生み出す機会となったと思います。

なお、下記の関連記事もぜひご参照ください。

頬鎧盃をプロダクト化|ニッコーとのコラボ商品を販売

B-OWND 古賀崇洋
《頬鎧盃 童 虎形 金》 
写真:木村雄司

第4に、本個展では、古賀崇洋氏、B-OWND、そして陶磁器専門のメーカーであるNIKKO(ニッコー株式会社、本社:石川県白山市)で共同開発した《頬鎧盃 童 虎形 金》が販売されました。

古賀崇洋氏が販売する作品のなかでも一際人気を集めている《頬鎧盃》シリーズをプロダクト化することで、より多くの人たちがその世界観を楽しめるようにとの願いを込めており、これは、B-OWNDが掲げる「すべての人をアートの当事者に」というミッションを具体化する取り組みのひとつとなっています。

個展を終えて|古賀崇洋氏が見つめる未来

古賀崇洋 カバー
個展会場の古賀崇洋氏
写真:石上洋

今回の個展を終えた所感として、陶芸家・古賀崇洋さんは次のように語られています。

古賀  無事に会期が終了致しました。このような時世にも関わらず、たくさんのお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました!

激動の現代を象徴するかのように激変する刺激的な街、渋谷。スクランブル交差点に表されているように、日本、世界中の人や文化が交差し、混じり合い、発信される特異な場所。そんな特別な場で展示することの意味については、個展前のインタビューで語らせていただきましたが、改めて今回、アート(工芸)、音楽、テクノロジーが掛け算され、新しい文化、特に工芸の可能性を示唆することができたと確信しております。

全ての歯車がかみ合い、展示内容、意味合い、これからの未来、数字的にも革命的展示になったと自負しております。関係者の皆さま、本当にありがとうございました!

混迷極まる今だからこそ、正解のないアートの力が必要とされている。その可能性を存分に発揮した陶芸家・古賀崇洋氏の個展は、『反わびさび(Anti Wabi-Sabi)』に込められる想いのとおり、来場したひとりひとりに秘められる創造力を解き放つ歴史的なものになりました。

引き続き、B-OWNDでは、古賀崇洋氏の作品に関する情報を配信して参りますので、楽しみにお待ちください。