古賀崇洋 陶芸家・古賀崇洋が「暗号資産」をモチーフとした新作《NEO MANEKINEKO》を発表!

ARTIST
2022年4月4日(月)~2022年4月11日(月)、RAYARD MIYASHITA PARK(東京都、渋谷)にて
陶芸家・古賀崇洋の新作《NEO MANEKINEKO –CRYPTO-(ネオ マネキネコ クリプト)》及び
これを映像化したNFTアート作品が展示される。
本作は今話題の「暗号資産」がモチーフとしているが
それはどのようなアイディアから生まれたのだろうか。
今回の記事では、その過程や作品のコンセプトなどについて取材した。
文:B-OWND

PROFILE

古賀崇洋

1987年、福岡県生まれ。2010年佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程卒業。2011年より鹿児島県長島町にて作陶。2017年より福岡県那珂川町、鹿児島県長島町にそれぞれ工房を構え、現在2拠点で作陶している。2021年、個展「Anti Wabi-Sabi Takahiro Koga Solo Exhibition-創造力は自粛できない-」(渋谷 or | RAYARD MIYASHITA PARK/東京)を開催。ほか、箏パフォーマンス集団「TRiECHOES」とのコラボレーション、ファッションブランド「adidas」とのコラボレーションなど、従来の陶芸のイメージにとらわれない、多彩な活動を展開している。

 

エアーズ・ジェフリー・正明

2014年より香港を拠点とするコンサルティング会社にて日本企業の海外進出にまつわるコンサルティング業務に従事。 2015年から2018年までINFORICH社のChargeSPOT事業の立ち上げに従事し、香港から日本進出までの業務に携わる。 その後、世界トップ5のブロックチェーンプロジェクトに参画。ブロックチェーンVCとして複数の事業への投資を管理。 アフリカのナイロビ拠点のブロックチェーン・インキュベーション会社取締役。 同じくナイロビ拠点の決済サービス会社の取締役。
並行して、Growthix Capital 株式会社でサーチファンド組成やM&Aクロスボーダー案件に関する海外顧客の開拓を担当。 そのほかにも、グロースハック事業、投資事業、NFT事業、コーチングなどの複数のスタート・アップ企業に携わるゼネラリストとして活躍している。

 

石上賢

1992年、愛知県生まれ。B-OWNDプロデューサー。画家の父、画商の母の元に生まれる。国内芸術家の経済活動の困難さを目の当たりにし、10代からアート作品の販売、大学在学中よりアーティストのプロモーション活動を開始する。これまでに50を超える展覧会の企画に携わる。2019年、アート・工芸×ブロックチェーンのプラットフォーム「B-OWND」を立ち上げる。

 

はじめに

「下剋上時代の陶芸」を掲げる陶芸家・古賀崇洋。

2022年4月4日 (月)から 2022年4月11日(月)、「RAYARD MIYASHITA PARK」(東京都、渋谷)南2F 吹き抜け広場にて、「暗号資産」をモチーフとした新作《NEO MANEKINEKO – CRYPTO–》を発表します。また同時に、この作品をデジタル化したNFT作品《NEO MANEKINEKO –BREAK-》も合わせて展示いたします。

今回古賀氏が「暗号資産」をモチーフとした理由はなんでしょうか。それは、「暗号資産こそ21世紀最大の下剋上である」という仮説がもとになっています。

そしてこのアイディアは、アーティスト、コレクター、プロデューサーの何気ない3名の会話のなかで生まれました。今回は、アーティスト・古賀崇洋氏、コレクターのエアーズ・ジェフリー・正明氏(以下、ジェフ氏)、B-OWNDプロデューサー・石上賢に、その当時のことを振り返りつつ、完成したばかりの《NEO MANEKINEKO – CRYPTO–》について語っていただきます。

なお取材は、福岡にいる古賀氏とリモートで行いました。

福岡の工房にて取材を受ける古賀崇洋氏
写真: Ryusuke Kanda
左)石上賢、右)エアーズ・ジェフリー・正明氏
写真:B-OWND

2021年はコロナ禍の現在を象徴する存在としての「招き猫」を発表

《NEO MANEKINEKO 0621-Ⅻ》(2021)
写真:木村雄司

石上 2021年に古賀さんが発表された《NEO MANEKINEKO(ネオ マネキネコ)》は、従来の「招き猫」をアップデートした作品として、6月の渋谷の個展(RAYARD MIYASHITA PARK内のカルチャーハブステーション「or」)でとても反響がありました。コロナ禍という、人やお金を「招く」ということが難しい状況のなかで、あえて「招き猫」を新作として発表したことは、古賀さんの作家としての大きな方向性を示していると思います。

古賀 そうですね。僕が作品を作るうえで意識していることは、時代を反映するということです。やはりコロナというのは、世界中の人々を苦しめていますし、僕自身も展示の予定がほぼなくなったりと、予想以上の打撃を受けました。

《NEO MANEKINEKO》以前の作品は、コンセプトはありつつも、やはり酒器や壺といった「器」が中心でしたが、ここにき、もっとアイコニックな作品を出したいなと思っていたタイミングでもありました。いろいろなタイミングが合わさったことで、コロナ禍の時代を象徴する存在としての「招き猫」が出来上がったと思います。

《頬鎧盃 人虎形 白 graffiti》
写真:木村雄司
作品販売ページはこちら

ジェフ 6月の個展は僕も伺いましたが、会場は熱気に包まれていて、すごく盛り上がりましたよね。古賀さんが「下剋上時代の陶芸」というものを掲げ、今までは《頬鎧盃》やスタッズが付いた酒器など、「器」を中心とされていたこともあり、「招き猫」を初めて拝見したときはすごく印象的でした。インパクトもすごかったし(笑)

古賀 ありがとうございます。

やはり僕は、現代が「下剋上の時代」だと感じます。SNSが発達して、誰もが世の中に向けて発信しやすくなっていますし、成り上がろうという強い意思や勇気があれば、誰もが上を目指せる、そんなチャンスが与えられているように思います。そこで今までは、現代の下剋上を目指す若者たちを鼓舞するというコンセプトで、《頬鎧盃(ほほよろいはい)》を制作したり、あとは現代で輝いている著名人をモチーフにした作品を発表してきました。そして昨年の《NEO MANEKINEKO》によって、アーティストとしても次のステージに進めたように感じています。

暗号資産は、21世紀最大の下剋上

石上 今回発表する新作は、この《NEO MANEKINEKO》のニューバージョンです。この作品のアイディアが出たのが、この3人で食事をしていたときでした。

ジェフ 福岡で古賀さんの工房を見学させていただいて、その帰りでしたね。

古賀 次の作品をどうする?というような雑談をしていたときに、ジェフさんが、「古賀さん、じゃあ絶対に暗号資産招き猫をつくってください」って。(笑)

ジェフ 古賀さんは「下剋上時代の陶芸」を掲げられているから、絶対にいいテーマだと思ったんですよ。だって、暗号資産は21世紀最大の下剋上ですから。

石上 面白い考えですよね。もう少し詳しく話していただけますか?

写真:B-OWND

ジェフ 暗号資産には、2つ意味での下剋上があると考えています。1つは、暗号資産が作られたコンセプトです。

有名な話ですが、暗号資産は2008年にサトシ・ナカモトが発表した論文によって始まりました。そのコンセプトは「政府に管理されない通貨をつくろう」というものでした。でも実は、その前にもいくつか同じような試みはあったんです。しかし、いずれも失敗に終わっていたんですね。お金には、世界の情勢を動かすような大きなコントロール力があります。だからこそ、政府のコントロール下にない通貨を生みだそうというコンセプトのもとに生まれた暗号資産は、ひとつの「下剋上」と見ることができると思います。これが1つ目です。

2つ目は、暗号資産に先行投資していた人々が、いきなり億万長者になったことです。そこには出自も学歴も関係なかったし、あれだけの人数がいきなり成り上がった時代というのは、過去を見ても一度もありませんでした。しかも彼らは、仮想通貨で得たお金を、さらにいろいろなものへと投資したり、また彼らが考える「正しいと思う社会」をつくるために会社を設立している。これは、本当に下克上のわかりやすい例だと思います。

石上 このお話聞いて、古賀さんは率直にどう思われました?

写真:Ryusuke Kanda

古賀 やっぱりしびれましたね。これでまた新しい意味合いの「招き猫」が作れそうだなって。

2021年の「招き猫」は、やはり「コロナ禍」というものを象徴する意味合いとして、その時代性を表すものでした。そして2022年は、その流れを踏まえながらも、やはり昨年NFTがアート界でも爆発的に広がっていったことが非常に強い印象としてあります。僕も昨年、B-OWNDさんとともに初のNFTアートを発表させていただきました。

石上 たしかにそうですよね。古賀さんはよく、「陶芸は素材としての強度が高いから、うまくいけば一万年先まで残る」とおっしゃっていますよね。たとえば、千年、一万年先の未来の人が古賀さんの作品を土から掘り起こして、「うわぁ、なんか出てきた!」となったとき、今の時代が一発でわかるような作品だと思います。

2022年の「招き猫」は、現在の暗号資産を取り巻く状況を象徴するものに

《NEO MANEKINEKO – CRYPTO–》 (2022)
写真:木村雄司

石上 ではこの暗号資産のお話を聞いて、古賀さんはそれをどのように作品に落とし込まれたのでしょうか。

古賀 今回の招き猫には、3種類の通貨を取り上げています、まず1つは、ビットコイン。これは、猫が首から下げ、作品の中央に位置しています。

もう1つは、USドルです。これは、もちろん法定通貨を象徴するものですが、招き猫はUSドルを踏みつけています。でも一方で、手に掲げるのは3つめの通貨、ステーブルコインの「テザー(tether)」なんです。

《NEO MANEKINEKO – CRYPTO–》 (2022)
写真:木村雄司

ジェフ そこが面白いですよね。

招き猫が持っている「テザー」という暗号資産は、ドルペッグ制を取っています。足でUSドルを踏みつけてはいるけれど、手に持っているのはUSドルによって価値の安定性が保たれるように設計されている通貨であるという、最高の矛盾です。法定通貨を踏みつけつつ、でも法定通貨を求めたいっていう本心が見え隠れしています。

写真:Ryusuke Kanda

古賀 そうですね。ちゃんとわかっているよ、っていう。(笑)

石上 結局、「暗号資産がこれから来る」とか、「絶対暗号資産を買え」とか、そういうスタンスの人も、一方でリスクヘッジのことを考えているんですよね(笑)。最大の下剋上が起きている2022年のこの現状を、アイコニックな招き猫に全部落とし込んでいるのが面白いです。

ところで、今回はドルを足で踏みつけるという、いつも以上に強い表現をとっています。何か心境の変化があったのでしょうか?

《NEO DARUMA graffiti 1021-Ⅰ》
写真:木村雄司

古賀 やっぱりアーティストって、社会に問題提起する役割もあるじゃないですか。たとえばバンクシーは、資本主義経済を皮肉っていたり、アンディ・ウォーホルが大量消費大量生産の社会の危惧を表現していたりとか。やはり、ああいう時代の変化に敏感に反応するのがアーティストだな、というのはずっと思っていて。

でも以前は、陶芸はそういった表現にあまり向いていない媒体だと思っていたんですよね。でも、よくよく考えてみれば「招き猫」も本来は焼き物です。先人たちが築いてきた集積みたいなところに、現代だからこそ組み込める要素みたいなものがあるんじゃないかと感じました。今回はそのあたりがバチっとハマった気がしています。

《NEO MANEKINEKO》に引き続いて昨年発表した《NEO DARUMA(ネオ ダルマ)》もそうですし、それらを経て、「陶芸」においてもよりセンセーショナルに、ダイレクトに伝えられるなと確信できてきたことが、ここ最近の心境の変化ですね。

でも正直、お金を踏みつけるのは、ちょっと胸が痛みました(笑)。

写真:B-OWND

ジェフ そうですよね。

古賀 制作中、この作品を見た父親にも「お札踏みつけてたらバチ当たるぞ!」って心配されて。でも話せば長くなるじゃないですか。だから「若者はこうなんよ」とか言って。(笑)

おわりに

《NEO MANEKINEKO – CRYPTO–》 (2022)
写真:木村雄司

ジェフ 今回、食事の場ではありましたが、こうやって複数のアイデアを持ち寄って、コンセプトを詰めたっていうこと自体が面白かったなと思っています。暗号資産というのは、結局は「分散技術」ですから、コミュニティがないと成立しないんですよね。そういう意味で「人やお金を招く」という意味合いがある「招き猫」は、本当にぴったりですし、二重に縁起がいいなと思います。

古賀 僕も普段、工房に籠って制作をしていると、外部の情報と遮断される時間も長くなったりしますし、今回はすごくいい刺激をいただきました。しかもそれが、信念をもって現代を生き抜いているお二人のような方との語り合いのなかで生まれたコンセプトというのは、自分のアーティストとしての方向性としても合っていて、とても印象的な出来事でした。

ジェフ それはとても嬉しいですね。実物を拝見するのが楽しみです。

石上 古賀さん、ジェフさん、本日はありがとうございました。

【展示について】

NFT作品《NEO MANEKINEKO –BREAK-》イメージ
CG制作:Yo Ishigami

RAYARD MIYASHITA PARKでデジタルサイネージを活用したNFT販売の実証実験を実施

~陶芸家・古賀崇洋氏とB-OWNDによる初のNFTポップアップイベント開催~

株式会社 丹青社(本社:東京都港区、代表取締役社長:高橋貴志、以下 「丹青社」)、三井不動産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社⻑:菰田正信、以下「三井不動産」)は、MIYASHITA PARK内の商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」(所在地:東京都渋谷区)のSouth 2F 吹き抜け広場およびデジタルサイネージを活用したNFT(※1)アート販売に向けた実証実験を行います。

陶芸家・古賀崇洋氏と丹青社がサービスを提供するアート・工芸のプラットフォームB-OWND(ビーオウンド)による初のNFTポップアップイベント「Takahiro Koga -CRYPTO-  ~下克上時代の陶芸×NFT~ produced by B-OWND」を2022年4月4日(月)から 2022年4月11日(月)まで開設します。

イベントでは、新進気鋭のアーティスト・古賀崇洋氏の新作のリアル作品および3DCG化したデジタルアートを展示します。館内でも一際存在感のある柱型のデジタルサイネージに合わせた表現を実現し、渋谷という立地における商業施設内での新たなアート展示の可能性を示します。

開設期間中は来場者にデジタルアートをモチーフにしたNFTアート「NEO MANEKINEKO –BREAK-」の事前購入権となる作品購入用ホワイトリスト(※2) NFT を配布します。ホワイトリスト登録者の中から抽選で100名様に、プレゼント用のNFTアートを差し上げます。NFTアートはイベント終了後に、NFT販売プラットフォームアプリ「HARTi®︎」にて購入いただけます。

2社はこの実証実験を通じて、空間における新たな体験価値の創造や作品の体験価値向上の可能性を図ります。

(※1)NFT(ノンファンジブル・トークン):唯一無二の「世界に1つだけのデータ」の価値を生み出せる代替不可能なトークン。ブロックチェーン技術を活用することで、改ざんが困難なデジタルデータを作成できる。

(※2)ホワイトリスト:NFTプロジェクトや作品に興味があることを事前に示すことで、プレセール等への参加が可能になる登録リスト。

【実施概要】

イベント名:Takahiro Koga -CRYPTO-  ~下克上時代の陶芸×NFT~ produced by B-OWND

期間:2022 年 4 月 4 日(月)~2022 年 4 月 11 日(月)

場所:RAYARD MIYASHITA PARK内 South 2F 吹き抜け広場

主催:株式会社 丹青社・三井不動産株式会社

協力:株式会社HARTi・ピクシーダストテクノロジーズ株式会社

NFTの販売:NFT 販売プラットフォームアプリ「HARTi®︎」(https://harti.tokyo/)で販売

      販売価格:30,000円(エディション数:100)

      ※イベント期間中は作品購入用ホワイトリスト NFT を配布し、イベント終了後に販売。

        ホワイトリスト登録者の中から抽選で100名様に、販売するNFTアートをモチーフにしたNFT作品をプレゼント。

リアル作品の販売:B-OWNDウェブサイト(https://www.b-ownd.com/)で販売予定

イベントに関するお問い合わせ:info@b-ownd.com

※詳細情報は B-OWNDのSNSをご確認ください。

Facebook: https://www.facebook.com/bowndjp

Instagram: https://www.instagram.com/bowndjp/

Twitter: https://twitter.com/b_ownd

※マスクの着用と咳エチケットにご協力ください。体調の優れない方はご来場をお控えください。

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